時間を置きに来る。さとやまcamp・外山美穂さんご家族

2026.09.24

さとやまcamp。外山さんご家族。キャンプ場にて。

Relay From hananonoの江原さんからご紹介いただいたのは、山ノ内町須賀川で「さとやまcamp」の開業準備を進める外山美穂さんご家族です。

さとやまcampは、オートキャンプ6区画ほどと、ソロ向けのフリーサイトを予定する小さなキャンプ場です。
でも、まだ整備の途中。管理棟も、炊事場も、これからつくっていきます。それでも、どんな場所にしたいのかは決まっています。

テーマは「余白」。大人数で賑やかに過ごす場所ではなく、コーヒーを飲んだり、焚火を眺めたり、普段はなかなかできない話をしたり。何かをするためではなく、何もしない時間を過ごすための場所です。

外山さんご夫婦は、二人とも須賀川出身。地元では当たり前だった里山の風景を、外から来た人たちが「いい場所ですね」と見つけてくれる。その言葉を受け取りながら、自分たちも改めて須賀川を見直してきました。

杉林だった土地の所有者を探すところから始めたキャンプ場づくり。約1年後のオープンを目指す、さとやまcampの現在地について伺いました。

蕎麦の花が広がる景色を、もっと知ってもらいたかった

Q. キャンプ場を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

A. 最初に「キャンプ場をやりたい」と言ったのは夫です。もともと私たちもキャンプやアウトドアは好きでした。このキャンプ場のすぐ下には牧草地があるのですが、コロナ前までは、そこで蕎麦の花まつりが開かれていました。一面に蕎麦の花が広がって、その向こうに里山が見える。初めてその景色を見たときに、「この景色を一人でも多くの人に知ってもらいたい」と思ったんです。

私たちは二人とも須賀川の出身で、今もここで暮らしています。須賀川は若い人が少なくなっていて、これからどうなっていくんだろうと感じることもありました。でも最近は、大西ぱんさんだったり、ピザの森山さんだったり、ひげのコーヒーさんだったり。地元では「ふわり」さんもそうですし、須賀川でそれぞれの活動を始める人が少しずつ増えています。そういう人たちを見ていると、以前とは少し違う感じがしてきました。

夫が「キャンプ場をやりたい」と言ったときも、私は何が何でもキャンプ場をやりたかったわけではありません。でも、須賀川に人が来るきっかけが一つ増えるなら、それはいいなと思いました。自分たちも、その一つになれたらいい。それで「いいね、やろう」となりました。

キャンプ場横の牧草地。奥にはそば畑があり、コロナ前はここ一体でそば祭りが行われていた。

「この場所でやりたい」から、所有者探しから始めた

Q. キャンプ場の整備を始めるまでにも、かなり時間がかかったそうですね。

A. 一番大変だったのは、土地ですね。ここは、もともと杉林でした。しかも最初は、誰の土地なのかもはっきり分からなかったんです。境界がどこなのか、番地がどうなっているのか。役場に聞いても、すぐには分からないところでした。

行政書士さんや土地家屋調査士さんにも相談して、実際に山の中を歩きながら杭を探しました。所有者が誰なのかを調べて、その方のお宅を直接訪ねて、話をさせてもらって。ありがたいことに、土地を譲っていただいて、ようやく自分たちの土地になりました。

隣接している土地についても所有者の方に相談して、快く協力していただきました。キャンプ場をやれる土地を探していて、たまたまここが見つかったというわけではないんです。この景色がある、この場所でやりたかった。だから、土地の所有者を探すところから始めました。

整備も、自分たちだけでやっているわけではありません。身近には大工さんや、木を扱う人、重機を扱える人、電気工事のできる人もいます。設計は設計士さんに相談しながら、実際につくるところは、できるだけ仲間に協力してもらいながら進めています。

水道も最初は難しいと思っていて、「タンクで水を運ぶしかないかな」と話していたんですが。でも、以前の蕎麦まつりとの関係で近くまで水道が来て、これもまたありがたいことになんですが、そこから延長させていただくことで実現しました。

一つずつ多くの方のご協力を得ながら「これならできるかもしれない」と進めています。

何もしない時間を過ごすための「余白」

Q. どんなキャンプ場にしたいですか。

A. 一番のテーマは「余白」です。静かに過ごしてほしいと思っています。施設をたくさんつくって、何でもできる場所にしたいわけではありません。人工物はできるだけ最低限にして、この場所の自然をそのまま残したいです。

自分の中では、贅沢って「何もしないこと」なんじゃないかなと思っています。普段は時間に追われていますよね。旅行に行っても、せっかくだからあそこも行こう、ここも行こうとなって、予定を詰め込みすぎて、帰ってきたら疲れていることもあります。そうではなくて、何もしないことをしに来る。

コーヒーを飲むとか、焚火を見るとか。普段はなかなかできない会話をするとか。時間を忘れて過ごしてもらえたらいいなと思っています。言ってみれば、ここに「時間を置きに来る」ような感覚です。

サイト数も多くするつもりはありません。オートキャンプは6区画くらいで、ほかにソロの方が使えるフリーサイトを少し考えています。大人数のグループでワイワイするキャンプ場というよりは、一人だったり、ご夫婦だったり、カップルだったり、少人数の家族だったり。静かに過ごしたい人に来てもらいたいです。

子どもがいたら声が出ることもありますし、完全に音をなくすことはできません。でも、お互いが少しずつ静けさを大事にできる。そういう規模にしたいと思っています。

この投稿をInstagramで見る

長野/北信/山ノ内町/キャンプ場(@satoyama.camp)がシェアした投稿

地元にいると気づかない須賀川の良さを、外から教えてもらった

Q. 須賀川でやることにも意味がありますか。

A. 私たちは二人とも地元なので、逆に気づいていないことがあると思います。ずっとここにいると、この景色が普通なんですよね。地元の人からしたら、「なんで須賀川でキャンプ場なの?」と思う人もいるかもしれません。

でも、外から来た人たちが「ここ、いいところだよね」と言ってくれる。移住してきた人の方が、私たちより須賀川のことを知っていることもあります。「こんなところがありますよ」と教えてもらって、「そんな場所があったんだ」と思うこともある。そういう人たちの見方を聞いて、自分たちも須賀川のことを見直すようになりました。

「須賀川なんて」と言うより、「須賀川っていいところですよ」と自分たちが思える。地元にいることは、そこが強みなのかもしれません。キャンプ場に来てもらって、ここだけで全部完結させたいとも思っていません。例えば、近くにはお肉屋さんもあります。

キャンプで使うお肉を提供してもらえるようになれば、「この地域に、こういうお店があるんだ」と知ってもらうきっかけにもなる。キャンプをしに来た人が、そこから少し地域を知る。そういう入口にもなれたらいいなと思っています。

つくり込みすぎず、開業まで一つずつ整える

Q. オープンに向けて、これから進めていくことはありますか。

A. まだまだあります。まず、無事にオープンさせることですね。

管理棟や炊事場をどうするか。トイレも必要ですし、電気も引く予定です。管理棟については設計士さんと話をしながら考えています。

最初は、本当に自然のままでいいと思っていたんですが、設計士さんから、「サイトごとに少しサインを入れるのもいいんじゃないですか」とか、いろいろ提案してもらっていて。なるほどな、と思う一方で、自分たちらしさをどこに出すのかは、まだ考えている途中です。

あまりつくり込みたくない。でも、ただ何もないだけではなくて、少しだけ「さとやまcampらしい」と感じてもらえるものはあってもいい。そのバランスを考えています。

もう一つは、獣対策ですね。「熊が出るけど大丈夫?」と言われることもあって。自分たちが見ていないだけで、この辺りにいるものだという前提で、安全対策はきちんと考えなければいけません。電柵も考えています。ただ、景観を大事にしたいので、いかにも柵で囲いましたという見え方にはしたくない。

安全を確保しながら、この場所の景色をどう残すのか。そこは、開業までにしっかり考えたいです。設備を増やして便利にすることよりも、この場所にある静けさや自然を、どう残したままキャンプ場にするか。そこを大切にしながら、一つずつつくっていきたいと思っています。

編集後記

「時間を置きに来る」。

外山さんの話の中で、特に印象に残った言葉でした。キャンプ場というと、どんな設備があるか、何ができるかを考えがちです。

でも、さとやまcampがつくろうとしているのは、その逆なのかもしれません。サイト数を増やしすぎない。人工物も増やしすぎない。予定も詰め込まない。そこに残るのが、須賀川の里山と、何もしなくてもいい時間です。

外から来た人たちに教えてもらった地元の良さを、自分たちなりの小さな入口にしていく。まだ整備中だからこそ、これからどんな場所になるのかを一緒に見ていきたいキャンプ場です。

We Can

山ノ内町須賀川での小規模キャンプ場運営(開業準備中)
オートキャンプ
ソロ向けキャンプ
少人数・ファミリー向けキャンプ
須賀川の里山を活かした滞在
地域の店舗・食材との連携
地域の土木・大工・林業・電気工事などとの連携による場づくり
須賀川周辺の地域情報の紹介

We Want

さとやまcampは現在、約1年後のオープンを目指して整備を進めています。
自然をできるだけそのまま残したい一方で、キャンプ場として安全に利用してもらうための整備も必要です。
特に考えているのが、景観を損なわない獣害対策です。熊などの野生動物がいることを前提に、電柵を含めた対策を検討していますが、この場所の雰囲気を壊さずに安全性を確保する方法を探しています。
また、管理棟やサインなどについても、つくり込みすぎず、それでも「さとやまcampらしい」と感じてもらえる形を考えているところです。
小規模なキャンプ場の運営経験がある方、景観と獣害対策を両立する方法に詳しい方、自然の中に馴染むサインや空間づくりができる方などとつながれたらと思っています。
開業後は、実際に利用してくださった方の声も聞きながら、この場所に合う形を少しずつつくっていきたいです。