蜂を見ていると、ずっと飽きない。養蜂士・有賀敬晃さんの話

2026.05.15

はちみつとネコ 有賀敬晃さん。養蜂箱の前にて。

Relay From TAMCURRYの田村ゆかりさんからご紹介いただいたのは、中野市で果樹と養蜂を営む「はちみつとネコ」の有賀敬晃さんです。

中野市で、果樹と養蜂をやっている有賀敬晃さん。りんごや桃を育てながら、蜂を飼い、自分で採ったはちみつを販売しています。りんごジュースやジャムなどの加工品も、自分のブランドで展開しています。話していると、とにかく蜂の話が止まりません。

「蜂って、人の顔覚えてるんですよ」
「蜂の性格って、飼い主に似るんです」
「怒らせると、一瞬でへそ曲げます」

穏やかな口調でそう話しながら、気づけば蜂の巣の構造や、採蜜のタイミング、冬越しの話へと続いていきます。もともとは農業経済を学び、別の仕事にも就いていました。そこから地元に戻り、果樹農家で働きながら養蜂を学ぶようになります。最初に飼った蜂は、冬を越せず全滅しました。

「愕然としましたね」

それでも、やめようとは思わなかったそうです。

「難しいんですけど、そこが面白くて。一生やれる仕事だなって思いました」

蜂に無理をさせない。自然にも無理をさせない。そんな有賀さんの仕事について伺いました。

農業を学び、地元に戻って、蜂に出会った

Q. 今のお仕事を始めたきっかけを教えてください。

A. 学生の頃は、農業経済学を学んでいました。農業でどうやって食べていくのかとか、自然環境と農業の関係とか、そういうことですね。実家も兼業農家だったので、もともと農業には馴染みがありました。

ただ、卒業後は県内の別の仕事に就きました。農業とは関係ない仕事です。その後、転勤やコロナのこともあって、地元に戻ってきました。その時、県の農村支援センターの紹介で、長野市の果樹園で働かせてもらうことになったんです。そこで、「りんごが成らなかったのは蜂がいないからだ」という話を聞いて。

たまたまの縁で、長野市の養蜂家さんのところでも勉強するようになりました。最初は勉強のつもりだったんですが、やってみたら、どんどん面白くなっていって。蜂を見てると、かわいいんですよ。刺されたら痛いですけど(笑)。

蜂の水飲み場を設置する際、水に浮く足場を用意してあげる一幕。「蜂も溺れちゃうことがあるんですよね」。

最初に飼った蜂は、全部いなくなった

Q. これまでで、一番大変だったことは何ですか?

A. 創業前に、一度自分で蜂を飼ってみたんです。春先に、10万円くらいかけて2箱から始めました。でも、冬を越せなくて、全滅してしまって。その時は、かなり愕然としました。「何がいけなかったんだろう」って。

Q. そこから、どうやって続けてきたのでしょうか。

A. 勉強ですね。本を読んで、インターネットで調べて、師匠に聞いて。やれることは全部やりました。

でも、やっぱり簡単じゃないんです。ただ、その難しさが面白かった。年間で考えると、蜂の管理って何百回もやり直せるわけじゃないんですよ。季節ごとのタイミングがあるので。だからこそ、ずっと勉強し続けられる。

「ああ、一生やれる仕事だな」って思いました。師匠なんて90歳でも現役ですからね。

蜂の餌を“ネコババ”するわけにもいかない

Q. 仕事をする上で、大切にしていることはありますか?

A. とにかく、無理をさせないことですね。自分にも、自然にも、蜂にも。

大量生産のはちみつって、加熱していたりするものも多いんです。でも、うちは基本的に濾過しただけです。

必要な分だけ採る。蜂の巣って、育児をする場所と、蜜をためる場所が分かれているんですよ。そこを見ながら採蜜しています。蜂の餌をネコババするわけにもいかないので(笑)。

採りすぎると、蜂が弱って冬を越せなくなることもある。次の年にも響きます。だから、本当に必要な分だけです。

今の時期は比較的おとなしいとのことで、養蜂箱を開いてお見せいただいた。

りんごと養蜂、両方やっているから見えること

Q. 有賀さんの強みは、どんなところにあると思いますか?

A. 果樹と養蜂の両方をやっているところかもしれません。養蜂だけ、果樹だけ、という人はいますが、両方やっている人はそこまで多くないので。

りんごの受粉を蜂にやってもらって、その蜂蜜を採って、さらにそのりんごも販売できる。これは長野ならではだと思います。

りんごの蜂蜜は、自分でも一番おいしいと思っています。養蜂側の気持ちも、果樹側の気持ちも分かるので、橋渡しみたいなことができればいいなと思っています。

遊休農地を、蜂のいる場所にできたら

Q. 今後やっていきたいことはありますか?

A. ずっと続けていきたいですね。りんごと養蜂を。

あと、将来的には遊休農地を、蜂の蜜源みたいにできたら面白いなと思っています。野菜や果樹をやるには大変な土地でも、花を植えて、蜂に蜜を集めてもらう形なら、維持できる可能性がある。

特に千曲川の河川敷とか。洪水リスクもあるので、農地としてやる人が減ってきているんです。でも、花がいっぱいあって、蜂が飛んでいて、「あの人、昔からずっとやってるよね」みたいな景色になったら面白いなって。

一人ではできないですけどね。

農業って、結局、お金にならないところに価値がある部分もあると思うんです。

長野環境保全センターさんのご協力のもと好条件の場所に設置。蜂の活動エリアは2km圏内。近くを見るとアカシアが白い花をつけ始めていた。

編集後記

取材後、「蜂の話なら、お酒飲みながらいくらでもできますよ」と笑っていた有賀さん。

飼っている、というより、一緒に暮らしている。
そんな距離感で蜂と向き合っている人なんだろうなと感じました。

We Can

果樹と養蜂の両方を行っていることが強みです。
りんごや桃を育てながら、自分の畑で蜂に受粉してもらい、その蜂蜜も販売しています。
蜂の管理や採蜜だけでなく、果樹側の視点も持っているため、両方の立場を理解しながら取り組めることが特徴です。
また、加工品やブランド展開など、6次産業としての取り組みも少しずつ進めています。

We Want

養蜂業界ではまだ新しい立場でもあり、知識や経験、人脈はこれからだと感じています。
原材料や資材、生産量の課題もありますし、一人ではできないことも多いです。
農業や養蜂、加工、地域づくりなど、いろいろな分野の人とゆるくつながりながら、少しずつできることを広げていきたいと考えています。

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アミちゃんケバブ アミット・シリナトさん

中野市のにぎわい創生推進事業「みんなで夜遊び実行委員会」で同じく活動しています。

Patisserie&Cafe MimiEden |ミミエデン 宮下彩花さん

同じく夜遊び実行委員会メンバーです。