諦める選択肢は、1ミリもなかった。麺屋こころ・石川琢磨が台湾まぜそばを広げる理由
2026.05.18
Relay From マスニ農園の清野友之さんからご紹介いただいたのは、株式会社こころの石川琢磨さんです。清野さんとはゴルフ仲間で、長野カントリークラブの会員同士でもあるそうです。
株式会社こころは、台湾まぜそばを中心に国内外で店舗展開する飲食企業です。プロデュース店を含めると、その数は87店舗。(令和8年5月取材時点)
国内のフランチャイズチーム、海外チームなど、それぞれ役割を分けながら店舗運営や出店を進めています。今年も国内で6店舗、海外では新たに2か国増え、計7か国に広がる予定だといいます。
代表の石川琢磨さんは、その数字を大げさに語るわけではありません。
ニコニコしながら、さらっと言います。
「最初の店は、大失敗だったんですよ」
27歳で始めた最初のラーメン屋は、お客さんが来ない日も多かった。
そんな時にテレビで見たのが、台湾まぜそばでした。
食べに行き、衝撃を受け、営業が終わるまで外で待って、教えてほしいと頼み込む。
次の日には、それまでの店をやめていたそうです。
諦める選択肢は、1ミリもなかった。
石川さんの台湾まぜそば一直線の歩みについて伺いました。
最初のラーメン屋は、大失敗だった
Q. まず、今のお仕事について教えてください。
A. ラーメン屋ですね。台湾まぜそばを中心に展開しています。
今は全体のマネジメントもしていますし、国内のFCチーム、海外チーム、それぞれの調整もあります。もちろん厨房に立つこともあります。国内は少なくなってきましたが、海外スタッフに指導する時などは現場にも入ります。
創業は2014年。プロデュース店も含めると、今は87店舗あります。
Q. もともとラーメン屋を始めたのはいつ頃ですか?
A. 27歳の時です。ただ、その時は今の台湾まぜそばではありませんでした。普通のラーメン屋をやっていました。2年やりましたけど、大失敗でしたね。
お客さんが来ない。来ても10人とか。
本当にうまくいかなかったです。
テレビで見た台湾まぜそばに、衝撃を受けた
Q. そこから台湾まぜそばに出会うわけですね。
A. そうです。たまたまテレビを見ていたら、台湾まぜそばが出てきたんです。
それが12年くらい前ですね。
衝撃でした。
「これ、ラーメンなの?」って思いました。
ラーメンといえばスープがあるものだと思っていたので、汁なしのラーメンを見て驚きました。食べてみたいと思って、テレビで見たお店に行きました。名古屋のお店です。そのお店の方が、後に自分の師匠になります。
食べた瞬間に、これはすごいと思いました。それで、営業が終わるまで外で待って、どうにか教えてもらえないかと直談判しました。
次の日には、自分がやっていたラーメン屋をやめました。

取材中も終始にこやかだった石川さん。大きな実績を、肩肘張らずにさらっと話す姿が印象的だった。
東京で勝負する
Q. そこから修行に入られたんですね。
A. はい。そのお店で修行させてもらいました。
ラーメンの知識はもともとあったので、台湾まぜそばを学ばせてもらって。
独立したのは29歳の時です。
ただ、名古屋でやると師匠のお店の邪魔になってしまう。
だから、東京でやろうと思いました。
師匠にも、「東京でやらせてもらえませんでしょうか」と伝えました。
それで2014年に、東京都大田区で「麺屋こころ」を始めました。
壁を自分で塗って始めた1号店
Q. 1号店はどんなスタートだったのですか?
A. お金がなかったので、かなり条件は限られていました。
1号店は、ラーメン屋の居抜きで、2階が住居でした。看板だけお願いして、あとは少しでもお金をかけないようにしました。
店内の壁も、自分でホームセンターに行って材料を買って塗って。
「こころ」のロゴも、知り合いにお願いして書いてもらったものです。
そして、オープンしてしばらくたった頃には、前の店では1日10人くらいでしたが、東京では100人くらい来てくれた。
10倍ですからね。
楽しくて仕方なかったです。
諦める選択肢はなかった
Q. 大変だった時期を、どう乗り越えたのでしょうか?
A. ラーメンが好きだったんですよね。それに、客商売が好きなんです。
実家が寿司屋だったので、飲食店の家系でもあります。
カウンター商売が好きなんですよ。
つらい時期もありましたけど、諦める選択肢は1ミリもなかったです。
どうにかなるんですよ。人間って。
もちろん、周りのサポートもありました。
助けてもらえた部分もたくさんあります。
でも、やっぱり自分に芯がないといけない。
神輿を担ぐ側も、担がれる人がブレブレだったら不安じゃないですか。
だから、自分がぶれずに突き進むことは大事だと思っています。
素直と謙虚
Q. 仕事をする上で、大切にしていることはありますか?
A. 難しいですね。
お客様に対しても、店舗に対しても、いろいろあると思いますけど、自分自身のことで言えば、誰に対しても素直でいること。謙虚さを忘れないこと。常に笑顔でいること。
そこは大事にしています。
名古屋にいた頃からお世話になっている方がいて、今も会社の役員にもなってもらっています。自分にとっては、父親みたいな存在です。
その方の後ろ姿を見てきました。物腰が柔らかくて、常に謙虚なんです。
そういう姿勢を見習ってきました。
そこをぶらさずにやってきた結果、物事がうまくいってきた部分はあると思います。
振り返ると、自分の周りにいてくれた人たちも良かったんだと思います。

店舗が増えても、現場の空気や人との距離感を大切にしている。
商売は、感性だと思っている
Q. 石川さんご自身の強みはどんなところだと思いますか?
A. 感性で生きているところですかね。商売は感性だと思っています。
ラーメンのレシピには教科書があります。
でも、提供の仕方とか、お客様との接し方には、決まったルールはありません。
「いらっしゃいませ」だけではなくて、その先のこと。
そこは、その人の感性だと思うんです。
教えられることって、あまりないと思っています。
自分で動いて、自分で気づかないと分からない。
相手がどんなにすごい人でも、教えてもらうより、自分でやってみたいんです。
壁にぶつかって、そこで「あっ」と気づく。
それが大事だと思っています。
まぜそばを、ひとつのカテゴリにしたい
Q. これからの展望を教えてください。
A. まずは100店舗です。目の前の目標として、そこはクリアしたいです。
ただ、一番の思いは、まぜそばというラーメンのカテゴリをもっと知ってもらうことです。
とんこつ、つけ麺、油そばは、みんな知っていますよね。
でも、「まぜそば」はまだそこまでではない。
まぜそばを、ひとつのカテゴリとして認知してもらいたいんです。
今はファミリーマートさんでも、うちの台湾まぜそばを扱ってもらっています。
冷凍の商品で、価格も手に取りやすいですし、クオリティも高い。
全国に店舗がある大手さんの力を借りて、知ってもらえる機会が増えるのは本当にありがたいです。
「まぜそばって、こんなにおいしいの?」
そう思ってくれる人が増えたら嬉しいですね。

Family Martで展開されている台湾まぜそば。「まぜそば」をもっと身近なカテゴリにしていくための大きな入口。
編集後記
石川さんは、明るく話しているのに、言っていることはかなりすごい人でした。
お客さんが来ない店をやっていた時に、テレビで台湾まぜそばを見て、食べに行って、営業後まで待って、「教えてください」と頼み込む。
そして次の日には、それまでの店をやめている。
普通は、なかなかできないと思います。
でも石川さんの話を聞いていると、それが大げさな武勇伝ではなく、「そうするしかなかった」という自然な流れに聞こえるのが不思議でした。
素直に動く。
謙虚でいる。
でも、芯は絶対にぶらさない。
そのシンプルさが、こころという会社をここまで広げてきたのだと感じました。
We Can
台湾まぜそばを中心に国内外で店舗展開を行っています。
国内フランチャイズ、海外展開、プロデュース店を含め、これまでに積み重ねてきた飲食店運営の経験があります。
また、現場に入り、海外スタッフへの指導や店舗づくりに関わっています。
まぜそばというカテゴリを広げるための店舗展開、商品開発、現場運営について、共有できる経験があります。
We Want
まぜそばという食文化を、もっと多くの人に知ってもらいたいと考えています。
飲食、流通、観光、スポーツ、地域イベントなど、まぜそばと掛け合わせて面白いことができる方とつながっていきたいです。
教えてもらうというより、一緒に動きながら形にしていく。
そういう関係を広げていけたらと思っています。