「焦らず、丁寧に」を積み重ねる。町の車屋さんが守り続ける、ネジ一本の安心感

2026.04.23

有限会社丸山自動車興業 丸山大氏。MARUYAMA YUTAKA.

Relay From 藤森果樹園の藤森陽一郎さん。お子さん同士が同級生というご縁で、日頃から交流のある藤森さんからバトンを受け取ったのは、有限会社丸山自動車興業の丸山 大|まるやま ゆたか さん。取材には、お店を一緒に切り盛りする奥様も同席してくださいました。

中野市で車の販売から修理、板金塗装、車検、保険までを一貫して手がける丸山自動車興業。丸山さんは、多くを語るタイプではありませんが、その一言一言からは、お客様の大切な「足」を預かる整備士としての重い責任感が伝わってきます。

ソーラーカーに魅せられた少年が、整備の道へ

Q. 車の仕事に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

A. 高校の部活動でソーラーカーを作って大会に出たのが始まりでした。自分で車をいじる楽しさを知り、もっと深く学びたいと短大へ進学した後に大学へ編入しました。卒業後は、ディーラー(いすゞ自動車)でトラックの整備士としてキャリアをスタートさせ、結婚を機にこの丸山自動車興業へ入りました。

うちは一台の車に対して、販売から車検、板金まで自社工場ですべて対応できるのが強みです。地域の方から事業者の方まで幅広い車種をお預かりしますが、どんな車であっても「ここで直してよかった」と思っていただける仕事を心がけています。

社屋のロビーにてご夫婦で。クラシックカーの上にあるのは後述する看板猫の拠点。

深夜の呼び出しと、忘れられない先輩の言葉

Q. これまでの経験の中で、今の自分を形作っていると感じる時期はありますか?

A. 前職のディーラー時代、トラックの故障対応で夜中に山奥まで救出しに行っていた時期ですね。20代の頃、初めて一人で現場に行った時は、何が原因でエンジンがかからないのか全く分からず、立ち尽くしてしまいました。結局、夜中に先輩に電話して助けてもらうしかなくて。自分の知識不足と未熟さが、本当に情けなかった。

翌日、尊敬する先輩から厳しく、でも直球で怒られました。その時の言葉が、自分を変えるきっかけになったと思います。それからは、日中の作業中も「もし夜中にこの故障で呼ばれたらどう動くか」と常にシミュレーションするようになりました。15年ほどそんな日々を過ごす中で、少しずつ「どんな故障でも任せてくれ」と言えるだけの引き出しが増えていった気がします。

「気になって眠れない」ほどの慎重さ

Q. 仕事と向き合う上で、特に意識されていることはありますか?

A. 「焦らず丁寧に」という、これに尽きますね。整備の世界では、ネジ一本の締め忘れが重大な事故に繋がりかねません。焦って良いことは一つもないと、身に染みて分かっています。

実は今でも、家に帰って布団に入った後に「あそこの作業、本当に大丈夫だったかな」と不安になって目が冴えてしまうことがあるんです。だから、作業中にネジを締めたら必ずチェックを入れ、重要な箇所は後で自分でも確認できるように写真を撮っておくようにしています。寝る前にその写真を見て、「よし、ちゃんとやってある」と安心してから眠る。それくらい慎重でありたいと思っています。お客様が走り出した後に、何かあってからでは遅いですから。

取材中、これまでの経験をゆっくりと振り返る丸山さん。物静かな語り口の中に、仕事に対する誠実さが滲みます。

看板猫が迎える、世代を超える店づくり

Q. これからの展望や、地域でのありたい姿を教えてください。

A. おじいちゃんの代から通ってくださるお客様が、お子さん、そしてお孫さんを連れてきてくれる。そんなふうに、世代を超えて頼りにしてもらえる場所でありたいですね。派手なことをする訳ではなく、日々の積み重ねと丁寧なアフターサービスを続けていくことが、一番の近道だと思っています。

(ここで、傍らで聞いていた奥様が笑顔で教えてくれました) 「うちは看板猫も接客担当なんです。お客様が座ると同時に膝に乗って『接待』を始めたり、時にはトラックの荷台に乗ったまま遠くまで旅に出て、一ヶ月後に帰ってきたり(笑)。そんな猫に会いに来てくださるお客様もいるんですよ」

丸山さん: そうですね。そんなふうに、地域の皆さんが気軽に立ち寄れて、安心して車を任せられる。そんな存在として、これからも一歩ずつ歩んでいければと思っています。

接待上手な看板猫「たま(8歳※取材時点)」。時にはボンネットに乗って旅に出てしまうほどの自由奔放さで、お店の雰囲気を和ませてくれます。

編集後記

多くを語らず、でも言葉を選びながら答えてくださる丸山さん。その姿は、華やかなパフォーマンスよりも「ネジ一本の締まり具合」を信じる、本物の職人の姿でした。

「心配で夜中に写真を見返す」というエピソードには、預かった命への重みが詰まっています。奥様が語る猫のユーモラスな話に、丸山さんがふっと目を細める。そんな温かな空気感がそのまま、地域の「安心」を支えているのだと感じた取材でした。

We Can

整備・修理はもちろん、事務所では人懐っこい看板猫が皆様をお迎えします。車のご相談はもちろん、「ちょっと猫に会いに」という気軽なご来店も大歓迎です。

We Want

現在、一緒に働いてくれる整備スタッフを求めています。技術も大切ですが、何より誠実に、長く付き合っていける方と出会えれば嬉しいです。

Next Relay

このバトンが、次へつながる。

有限会社草間商事 小林洋貴さん

同じく草間地域で、仕事でも頻繁に顔を合わせる信頼できる方です。