お酒を飲んで、最後に蕎麦で〆る。イドコロ商店・岩本啓汰さんがつくる夜の蕎麦屋

2026.07.11

イドコロ商店 岩本啓汰さんご夫婦。店内にて。

Relay From 大西ぱんの大西英遂さんからご紹介いただいたのは、イドコロ商店の岩本啓汰さんご夫婦。

岩本さんは、昼は須賀川にある実家の「岩本そば屋」で蕎麦を打ち、夜は湯田中で「イドコロ商店」を営んでいます。イドコロ商店は、ビールや日本酒を飲みながら、豆皿の料理や小料理を楽しみ、最後に蕎麦で〆(しめ)るお店です。

実家が蕎麦屋だった岩本さんですが、小さい頃から継ぐつもりだったわけではありません。きっかけのひとつは、高校生の頃に須賀川のそば祭りで見た蕎麦畑でした。

その後、東京の蕎麦屋で働き、酒を飲んで最後に蕎麦で〆るという楽しみ方に触れます。須賀川の蕎麦と、東京で知った夜の蕎麦屋の時間。その両方が、今のイドコロ商店につながっています。

昼は岩本そば屋、夜はイドコロ商店

Q. まず、イドコロ商店はどんなお店なのでしょうか。

A. イドコロ商店は湯田中にある夜営業の蕎麦屋です。ビールや日本酒などのお酒を楽しんでもらいながら、豆皿で一品料理や小料理を出して、最後にお蕎麦で〆てもらうようなお店です。

Q. お蕎麦屋さんを、始められたのはどうしてですか?

A.  実家が須賀川にある「岩本そば屋」なんです。4年前ほど前に東京から帰ってきて家業に入りました。なので、昼間は須賀川の岩本そば屋で蕎麦を打ち、夜は湯田中でイドコロ商店をやっています。

店内カウンターにて。須賀川蕎麦と、夜の蕎麦屋の楽しみ方についてお話いただいた。

継ぐつもりはなかったけれど、蕎麦畑の景色が残っていた

Q. もともと家業を継ごうとお考えだったんでしょうか。

A. 家業ですので、小さい頃から蕎麦に触れて育ってきました。ただ、小さい頃から「自分が継ぐんだ」と思っていたわけではないです。高校生くらいのときに、須賀川のそば祭りで蕎麦畑を見たんです。その景色がすごくきれいで。地域の人たちが、この蕎麦畑を守っているんだと知って、自分もそうありたいと思ったんです。

Q. 蕎麦そのものだけでなく、須賀川の景色や地域の人たちも印象に残ったんですね。

A. 蕎麦屋の家に生まれて、蕎麦に触れてきたというのもありますけど、その蕎麦畑の景色は自分の中に残っています。その後、専門学校に進んで、東京の蕎麦屋で2年ほど働きました。

須賀川の蕎麦畑。高校生の時に見た風景が、蕎麦の道に進むきっかけになった。

東京で知った、酒を飲んで蕎麦で〆る文化

Q. 専門学校卒業後に上京されたのはどのようなお考えがあったんでしょうか。

A. 地元だけではなくて、違う蕎麦文化を経験したかったんです。東京のお店は、蕎麦への熱量も高くて。そこで働いて、蕎麦って面白いなと思わせてもらいました。同時に、実家のある須賀川の蕎麦文化のすごさや面白さも、改めて感じるようになりました。

Q. 東京で働いたことで、蕎麦の見え方は変わりましたか。

A. そうですね。長野県だと、蕎麦はお昼に食べる方が多いと思います。長野県民あるあるかもしれないですけど、お蕎麦は昼に食べるイメージが強い。でも、東京では、お酒を飲んで最後に蕎麦で〆る文化があるんです。明るい時間からでも蕎麦前としてお酒とおつまみを楽しみ、最後をお蕎麦で〆る。その感じが、すごく格好いいなと思いました。

江戸の蕎麦文化というか、そういう粋な世界を肌で感じました。

予定より早く帰ってきた理由

Q. 東京には、もっと長くいる予定だったそうですね。

A. 本当は10年くらい東京にいるつもりで、30歳くらいで帰ってこようと思っていたんです。でも、いろいろ考える中で、10年後に帰ったとき、須賀川の蕎麦文化がどうなっているかわからないと思いました。家族も元気で岩本そば屋を続けられているかどうかもわからない。

そう考えたら、今しかないと思ったんです。それで東京から帰ってきて、岩本そば屋に入りました。

岩本そば屋ではできない夜を、イドコロ商店で始めた

Q. 岩本そば屋とは別に、イドコロ商店を始めたのはどうしてですか?

A. 岩本そば屋には岩本そば屋としてのあるべき姿があります。昼に蕎麦を食べに来てもらうお店として、そこに合った形がある。一方で、自分が東京で見てきたような、お酒を飲んで最後に蕎麦で〆るお店もやりたいと思っていました。須賀川は車で来られる方が多い場所なので、お酒を飲まれる方はどうしても少なくなる。そこに自分がやりたいお店との違いを感じていました。

Q. それで湯田中の方でイドコロ商店を始めたんですね。

A. そうですね。山ノ内でやりたいという気持ちもありましたし、須賀川の蕎麦をもう少し知ってもらえたらいいなという思いもありました。須賀川だと車が必要で、お酒を飲まれる方も限られます。それなら、観光地でもある湯田中の方に降りてきて、少しでも須賀川蕎麦の食文化を広められたらと思いました。

お酒を飲んで、豆皿の料理をつまんで、最後に蕎麦で締める。そういう雰囲気をみんなで共有したかったんです。

1枚1枚表情が違う蕎麦。その日の気温や状態を見ながら向き合っています。

まだ決まりきっていない店を、夫婦二人で作っている

Q. お店を始めてから、大変なことはありましたか。

A. 大変なことばかりですよ(笑)。お店はオープンして2年目。これという大きな出来事があるというより、日々いろんなことを試行錯誤しています。

蕎麦もそう。1枚1枚表情が違います。質も気温で変わりますし、そのときの蕎麦との接し方も変わってくる。事業としても何が正解かもわからない中ですが、自分たちがどうお客さんと関わって、楽しんでもらうかを考えています。そこが面白いところでもあります。

自分たちのスタイルが定まっていないままずっと来ている感じもありますが、夫婦で都度「こういうお店にしたいね」と話し合っています。お店はこれからも、夫婦二人でずっとやっていきたいですね。

料理だけではなく、岩本さんご夫婦に会いに来る常連さんもいる

手は抜かない。でも、肩肘張りすぎない

Q. お店をやるうえで、大切にしていることはありますか。

A. 手を抜かないことです。蕎麦づくりの手を抜かない。ただ、それと同じくらい、自分たちがどれだけお店を楽しめるかも大事にしています。

お客さんに楽しんでもらおう、頑張ろう頑張ろうとすると力みが出てしまう。リラックスした時間も崩れてしまう気がしています。お客さんに楽しんてもらいたいと思いつつも、あまり深く考えすぎず、まずは自分たちが楽しく営業することを心掛けています。

Q. お客さんには、どんな時間を過ごしてほしいですか。

A. 夜のごはんの時間を楽しんでもらえたらいいですね。自分たちが楽しく、そしてそれが少しでもお客さんに伝わればいい。

何気ない一日の中の時間かもしれませんが、「楽しかったな」と思って帰ってもらいたい。それが明日への活力になったり、「楽しかったよ」と言ってもらえたりしたら、幸せなことだと思います。

夫婦二人であることが、強みでもあり弱みでもある

Q. イドコロ商店の強みは、どんなところだと思いますか。

A. 夫婦二人で営業していることだと思います。弱みでもあるんですけど、強みでもあります。

飲食店で「もう一回行きたい」と思うお店って、料理のおいしさももちろんありますけど、誰かに会いに行くことでもあると思うんです。僕たち二人でやっていることは、お店のキャラクターでもあるし、個性でもある。

営業中にケンカをするわけではないですけど、常連の方は私たち二人のやりとりも何となくわかってくれていた。それも含めて楽しんでくれているところはありますかね(笑)。

お酒と小料理を楽しんだあと、最後に味わうイドコロ商店の蕎麦

蕎麦文化を、毎日の営業の中に置いておく

Q. これから先、須賀川蕎麦やイドコロ商店をどうしていきたいですか。

A. 蕎麦文化を残したいという気持ちはあります。ただ、「なくなってしまうから、なんとかして続けよう」と強く考えているわけではないです。

今、須賀川で蕎麦を打って、毎日営業して、その積み重ねの中で、誰かが須賀川蕎麦を好きになってくれたらいいなと思っています。そこから、いつか継承する人が出てきたら、それは素晴らしいことだと思います。

Q. 具体的な取組みというより、日々の営業を大切に捉えているんですね。

A. そうですね。地域の方が幸せで、楽しくこの町に住んでもらえたらいいなと。イドコロ商店にも何かできることはあるのではないか、と常に考えています。ただ、何か大きなイベントをやるというよりは、普段の日常の中でお店があることが誰かの幸せになればいい。その幸せが、誰かを連れてきたり、また誰かに広がったりして、町に少しずつ広がっていけばいいですね。

まずは、目の前のお客さんに「今日、楽しかったな」と思って帰ってもらうこと。そこからなのかなと思っています。

We Can

昼の岩本そば屋での蕎麦の提供
夜のイドコロ商店での酒と小料理、締めの蕎麦の提供
須賀川蕎麦の提供
蕎麦打ち
豆皿料理、小料理の提供
夫婦二人での小規模飲食店運営
湯田中エリアでの夜営業
須賀川蕎麦や山ノ内の食文化に関する話

We Want

須賀川蕎麦を知ってもらう機会
夜に蕎麦を楽しむ文化に関心のある方とのつながり
山ノ内・湯田中エリアでの飲食や宿泊との接点
須賀川や山ノ内の食文化に関心のある方とのつながり
日常の中でふらっと立ち寄れる店としてのつながり
お酒と蕎麦を楽しむ時間を共有できる方とのつながり

Next Relay

このバトンが、次へつながる。

FARMERs STYLE 金子真一朗さん

農業体験など、若い人を巻き込んで農業を盛り上げている方ですので、ご紹介させていただきます。