収穫だけでは、農業はわからない。FARMERs STYLE・金子真一朗さんの仕事
2026.08.10
Relay From イドコロ商店の岩本さんからご紹介いただいたのは、FARMERs STYLEの金子真一朗さん。
金子さんは山ノ内町で、りんご、もも、ブルーベリー、野菜などをつくっています。野菜ではピーマンが中心です。農産物の生産・販売に加えて、りんごを加工したりんごジュースの販売も行っています。その中でも、金子さんが力を入れているのが農業体験です。農業体験といっても、収穫だけではありません。りんごやももをつくる作業そのものに入ってもらう、いわば「ガチの農業」です。
大学卒業の時期に病気が見つかり、療養のため山ノ内町へ戻ってきた金子さん。そこで始めた農業は、自分自身を支える仕事にもなりました。今は、子どもたちに農業のきつさだけでなく、楽しさや、働き方のひとつとしての農業を知ってもらう場をつくっています。
果樹と野菜をつくりながら、農業体験に力を入れる
Q. FARMERs STYLEでは、どんなお仕事をされているのでしょうか。
A. 主には農業です。この町の特産でもある、りんご、もも、ブルーベリー、野菜をつくっています。野菜の中ではピーマンが主要です。農地は、山ノ内町の南部にりんごとぶどう、西部にもも、ブルーベリー、ピーマンがあります。生産にも力を入れていますし、りんごを加工して、りんごジュースとして販売もしています。りんごジュースは町内で販売していて、ももなどは県外への販売が主になっています。
Q. 農業体験にも力を入れているとお聞きしました。
A. そうですね。今、一番力を入れているのは農業体験です。特に、子どもたちに農業とはどういうものなのかを知ってもらいたいと考えていて。農業というと、どうしてもきついという印象が先に来ると思います。もちろん大変な部分もありますが、楽しい部分もある。そこにフォーカスして取り組んでいます。
Q. 農業体験とはどのような内容なんでしょうか。
A. 一般の方に少人数で来てもらうというよりは、団体向けが多いですね。何十人単位で来てもらって、僕らがやっているような作業と同じ内容を体験してもらいます。北信地域の特別支援に関わる子どもたち向けにも、農業体験を提供しています。農業を通じて、何かを感じてもらったり、これからの選択肢を少しでも持ってもらえたらと思っています。

FARMERs STYLEの金子さんに、農業を始めた経緯と農業体験への思いを伺いました。
収穫だけではなく、つくる過程から体験してもらう
Q. 農業体験では、どんなことを大切にしているのでしょうか。
A. 収穫だけで終わらせないことです。収穫体験だけであれば、他にもできるところはたくさんある。もちろん収穫も楽しいですし、入口としては大事かもしれません。でも、それだけでは農業のことを知ることはできないと考えています。
りんごをつくる作業、ももをつくる作業。そういう作物をつくる過程から入ってもらわないと、農業をきちんと知ってもらえない。
Q. かなり本格的な体験なんですね。
A. そうですね。いわば”ガチ”の農業です。僕らが普段やっている作業を正に体験してもらえるように工夫しています。農業は、収穫の前にたくさんの作業があります。そこを知らないと、作物がどうできているのかもわかりません。大変なところは確かに多い。でも、そこに入ってもらうからこそ、農業の面白さも見えると思っています。
病気をきっかけに山ノ内へ戻り、農業を始めた
Q. なぜ農業を始めたのですか。
A. もともと、農業をやる予定はありませんでした。大学進学で上京して、卒業後の東京での就職も決まっていました。でも、訳あって山ノ内へ帰ってくることになったんです。
父が経営する会社が旅館業だったのですが、当時はコロナの関係で観光業も落ち込んでいた時期でもあって。そんな中、父の会社で農業の事業部を立ち上げることになって、「お前がやれ」と。それが始まりでした。ホテル豊生を経営する有限会社金子のひとつの部門として、僕がその事業部長でスタートした事業になります。
Q. 帰ってきたタイミングと、事業の立ち上げが重なったんですね。
A. ある意味ではちょうどいいタイミングだったかもしれません。そこから農産物の栽培や販売、加工品の販売、農業体験などを進めていくことになりました。

借りている農地や支えてくれる人たちへの責任感も、金子さんの仕事を支えています。
農業、そして借りている畑の責任が支えになった
Q. これまでの歩みで大変だったことはありましたか。
A. 自分にとって、一番大きな壁は病気でした。大学卒業と同時期に病気が見つかって、地元山ノ内に帰ってきたのは療養のためです。治療の後、再発したりもしましたが、5年経った今では経過観察のみ。寛解しています。
Q. どのようにして乗り越えてこられたのですか。
A. 主治医の先生から言われた事のひとつが、「君がここまで良くなったのは、太陽の下で働いているから」。病気を乗り越えてこられたのも、農業(の存在)が大きいですね。
農業を続けていくにも、使っている農地のほとんどは人からお借りしているところですから、自分のせいでその農地を返すことになるのは忍びない。農家さんたちの思いも背負って、何がなんでも生きなきゃと取り組んできました。家族や会社のみんな、友人、農家さん、取引先の方々、本当にいろいろな人に支えてもらったおかげで、ここまで来られたと思っています。
農業をしてほしいのではなく、選択肢を知ってほしい
Q. 子どもたちに農業体験を届けたい理由は何ですか。
A. 農業をしてください、というわけではありません。農業を通じて、こういう働き方があるんだなと選択肢を持ってもらいたい。子どもたちが自分の将来とか、何かを考えるきっかけになればいいなと考えています。
Q. 農業体験が、仕事や生き方を考える入口になるということですね。
A. そうですね。自分も病気をした中で、やりたいことを持ち続けてきました。だからここに立てていると思っています。子どもたちにも、それぞれ悩みやコンプレックスがあると思います。自分が何かを克服させられるということではないですけど、農業の体験が向き合うきっかけになるかもしれない。
農業には、大変な部分も楽しい部分もあります。その両方を知ってもらうことで、働くことや生きることの選択肢が少しでも広がればいいなと思っています。

金子さんが植えたシャインマスカット。この夏が最初の収穫で感慨深いと話す。
若い農園として、地域で新しいことを始める空気をつくりたい
Q. FARMERs STYLEの今後の展望をお聞かせください。
A. 自分の夢みたいな話になってしまうかもしれませんが、この町の人たちが夢を持って生きていけるところになればいいなと考えています。最近では、若い人たちが始めたお店や事業が増えてきました。昔は、何か新しいことを始めると叩かれるような空気もあったかもしれませんが、今は少しずつ緩和されてきているようにも感じます。
若い人が何かを始めやすい地域になればいい。挑戦しろと追い立てるわけではなくて、この地域を自分たちの世代に任せても大丈夫だと思ってもらえるようにしていきたいですね。
Q. FARMERs STYLEとしては、どんな役割を担っていきたいですか。
A. うちの強みは、とにかく若いことです。自分は28歳ですが、自分より若い子も農園に増えてきました。若い分、新しいことに対してどんどんチャレンジしていく力がある。農業だけに限らず、いろいろな企業ともつながりながら、できることの幅を広げていきたいです。
編集後記
金子さんの農業体験は、収穫の楽しさだけを切り取るものではありませんでした。
作物をつくる過程に入るから、農業の大変さも、面白さも見えてくる。病気をきっかけに山ノ内へ戻り、農業に支えられてきた金子さんだからこそ、子どもたちに「こういう働き方もある」と伝えようとしているのだと感じました。
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りんご、もも、ブルーベリー、野菜の生産・販売
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このバトンが、次へつながる。
株式会社木の心 小林翔太さん
中学の同級生つながりです。林業を営まれていて、個人事業から法人成されたとお聞きしています。