食う、寝る、遊ぶ。里山ようちえん おやまのおうち・山崎龍平が育てたいもの

2026.06.18

里山ようちえん おやまのおうち 園長・山﨑龍平さん

Relay From 原豆腐園の原隆一郎さんからご紹介いただいたのは、一般社団法人てとての代表理事であり、「里山ようちえん おやまのおうち」の園長を務める山崎龍平さんです。

山ノ内町須賀川にある「里山ようちえん おやまのおうち」は、山崎龍平さんが園長を務める認可外保育施設です。園庭には、平らな場所ばかりがあるわけではありません。泥があり、草があり、坂があり、子どもたちはその中で遊びます。

山崎さんが大切にしているのは、食う、寝る、遊ぶこと。自分でお腹がすくことに気づき、たくさん動いて、疲れたら休む。その根っこを育てるために、里山という環境があります。

保育園の運営だけでなく、保護者との関係づくり、地域とのつながり、子どもたちの興味から生まれるプロジェクト。須賀川という土地で、子どもが育つ場所をつくりながら、山崎さんは地域に人が関わる余白も広げています。

食う、寝る、遊ぶ

Q. まず、「里山ようちえん おやまのおうち」について教えてください。

A. 一般社団法人てとてでは、メインとして保育園を運営しています。名前は「里山ようちえん おやまのおうち」です。認可外保育施設という枠で、2017年に開園して、今年で10年目になります。一番大事にしているのは、子どもたちの心と体が健やかに育つことです。

食う、寝る、遊ぶ。

人間の大事なところですよね。ちゃんと自分で食べて、たくさん活動して、疲れたら休む。人間の根本になっているお腹がすくことに気づくこと、自分で疲れたことに気づくこと、そういう部分を育てたいと思っています。

園庭に生える樹々と遊具。遊具は山崎さんが自作したもの。樹々には桑やクルミなどが実っていた。

里山で育つ体と感覚

Q. 「里山」という環境を大切にしている理由は何ですか?

A. 里山は、日本独自の文化だと思っています。人間と自然が密接に関わる場所。自然と共生しながら、自然の恩恵を受けて暮らしてきた場所ですよね。子どもたちには、自然と関わりながら、自然に対する畏敬や畏怖の念を感じて育ってほしいと思っています。その中で子どもたちが気づいたり、学んだりすることは、あとからついてきます。自然の中に身を置いて、子どもと一緒に遊んで暮らす。そういう保育園です。

Q. 園庭にも、あえて平らではない場所が多いと伺いました。

A. そうですね。なんでここの庭には、平らなところが少ないのか。泥があって、草があって、坂があるのか。それは、子どもの体を育てるためです。今、子どもの体の発達がゆるやかになっているという話があります。運動能力の数字も、昔と比べて低下している部分がある。乳幼児の時期に、体の使い方や神経系の発達を伸ばすことは大事です。体が育つと、自信がつきます。そうすると、自立心も育っていく。そうやって、心と体の部分を育てることを大事にしています。

園庭に流れる小川。イワナの稚魚を放流した、生態調査プロジェクトの実施個所。

子どもの興味から、毎年いろいろ始まる

Q. 自然の中で遊ぶことと、学びはどのようにつながっていますか?

A. 子どもたちが興味を持ったことを、深めていくようにしています。例えば、イワナの稚魚をみつけて、そこからイワナの生態調査プロジェクトを立ち上げたり、泥を使ってケーキを作る時はどうやってホイップを作るか考えたり。お当番の活動もありますし、お金を稼げるようなお仕事の仕組みもあります。仮想通貨みたいなもので、頑張って働くと「1ヤギー」がもらえる、みたいな。

子どもたちが興味を持つことから、毎年いろいろなプロジェクトが立ち上がります。偶発的ではあるんですけど、それが面白いところでもあります。

保護者もつながる場所に

Q. 保護者との関係づくりも大切にされているのですね。

A. 保護者の支援も大事にしています。今は、子育てをしている人たちにとって、コミュニティが少ない時代だと思います。だからこそ、保育園というコミュニティの中で保護者同士がつながることも大切にしています。趣味の話でもいいですし、子育ての話でもいい。その中で、保護者の方が困っていることにアンテナを伸ばして、ちゃんとキャッチして支援していきたいと思っています。子どもだけではなく、保護者も含めて支える場所でありたいですね。

もとをたどれば、遊んで暮らしたかった

Q. 山崎さんが保育の道に進んだきっかけは何だったのでしょうか?

A. もとを辿れば、遊んで暮らしたかったということですかね(笑)。高校生の時から、何かを育てることに興味があって、そこから保育の道に進みました。大学で勉強して、3歳までの育ちが大事だということを知って。また、20歳くらいの頃から起業したい気持ちもありました。卒業後は、東京の保育園で働いたり、バンドをやったり、フリーターをしていた時期もあります。

2011年の震災があった頃、都会の人混みが嫌になっていて、移住を考えるようになりました。
最初に移住したのは飯山市です。妻の実家がある地域でした。そこに拠点を置いて働きながら、起業の機会をうかがっていました。

たまたま物件が見つかって、たまたま需要もあって。少し早すぎたかもしれませんが、2017年に里山ようちえんを立ち上げました。
この須賀川は自然が豊かです。激しすぎるくらい。暮らすには大変なところもあります。でも、子どもたちの成長には必要な環境だと思いました。

ほとんど子どもたちが植えたという田んぼ。

お金がない。だから動く

Q. これまでで大変だったことはありますか?

A. 大変だったことは、お金がないことくらいですね。今から思い出すと、とにかく最初のうちはお金がなくて大変でした。この地域で保育園を始める時に、自由に目一杯遊ぶ保育をしているところは、あまりありませんでした。「こんなに遊ばせて大丈夫なのかしら」と思われることもあったと思います。最初は少人数でしたし、入園希望者を集めるのも苦労しました。年々、少しずつ増えてはいきましたが、本当に少しずつでした。

保育無償化の流れの中で、収入の入り方が変わった時期でもあって。それまでは保育料収入として先に頂いていたものが、保育の実績に基づいて後から入る形になったんです。移行期間の2か月は無給で、さすがにやばいと思ってアルバイトもしました。そのおかげでつながりもできて、今の保育に活きている部分もあります。

Q. そういう時に大切だと思うことはなんでしょうか。

A. 大変だと思っている暇があったら、どうにかするしかないんです。不安がっているだけではよくない。なんでもいいから、とにかくアクションを起こし続ける。最初のうちは特に、それが重要だと思います。

考えてちゃいけない。とりあえず動く。だめだったら考えて直して、アップデートして。そうやって繰り返していけば、それは失敗ではないと思っています。あとにも戻れない、引き返すこともできない、となったら失敗かもしれません。でも、直してアップデートしていけるなら、失敗ではない。

時代も、人の考えも、仕組みも変わっていきます。10年やってきましたが、新時代、新人類だと思って、アップデートし続けています。

こだわらないことが、こだわり

Q. 仕事をする上で、こだわっていることはありますか?

A. こだわらないことが、こだわりです。もちろん、芯は一本持っていないといけません。でも、こだわりすぎないことも大事だと思っています。特に、人がどんどん関われるようにして。関係人口が増えるほど、面白くなるんですよね。基本的には、コミュニティづくりだと思っています。

横のつながりも、縦のつながりもあります。市町村が違う人もいますし、移住者もいますし、外国籍の人もいます。いろいろな人がいる場所になっています。その人たちが、なぜここに来ているのか。子どもを育てるということが、芯として一本あります。そこは大事で、大きく変えてはいけないところです。

でも、それ以外のところは、人がたくさん集うことで変化していく。その変化を楽しみながら取り組んでいます。そうすると、少しずつコミュニティも大きくなって、醸成されていく。ここの心地よさに気づいた人が、またいろいろな場所に散らばっていく。そういう人たちが、また別のコミュニティをつくったり、活動してくれたりすればいいと思っています。

卒園児の植えた柿の木。園庭にはクワやクルミの樹々のほか、野草もたくさん生えている。

須賀川を、点から面へ

Q. 今後、この地域でやっていきたいことはありますか?

A. 現実的な話でいうと、この地域で関係人口が増えればいいと思っています。移住者に寛容な地域ではありますが、移住者が多いわけではありません。遊休荒廃農地もたくさんある。里山の保全や、文化の継承、保護を考えれば、誰かしらが担っていかないといけない。でも、急にそれを担ってくれる人が来てくれるわけではありません。

とはいえ、過疎地で終わらせるにはもったいないエリアだと思っています。年配の方たちには、蕎麦の活動で須賀川レインボークラブとして地域のためにいろいろ動いている方もいます。それはそれでとても大事なことだと思いますが、そこに若い人が入るのは少し違う気がして。

若い世代は別の視点で、新しい流れを生み出していきたい。新しく事業を始めている人も、だんだん増えています。そうやって須賀川という地区で、関係人口を増やしていきたい。点々と盛り上がっている状況が増えていけば、それが面になる。これからは、その点を面にしていきたいです。イベントの企画は得意ですし、なんでもできると思っています。子どもが育つ場所をつくることと、地域に人が関わるきっかけをつくること。その両方を、ここで続けていきたいですね。

 

編集後記

山崎さんの話は、子どもの育ちと地域づくりが自然につながっていました。
余談ですが、園内通貨単位ヤギー。この着想のきっかけか否かはさておき、園舎入口には看板ヤギ?が出迎えてくれていました(撮り忘れ)。

おやまのおうちメモ
園内通貨「ヤギー」

記事に出た園内通貨ヤギーについて説明しよう!おやまのおうちには、保育園内通貨「ヤギー」がある。モチーフはヤギのウンコ💩。子どもたちは仕事をするとヤギーをもらい、ヤギー通帳に「⚫️」をつけていく。

チリも積もれば、なんとやら。たまったヤギーは、法人内通貨「おやまねー」に換金することができるぞ!

10ヤギー = 1おやま
10おやま = 500円

おやまねーは、小学生や大人も参加する秋祭りで使うことができる!小学生たちは、秋祭りで出店やステージ出演などをしながら、「稼ぐ」ことも学んでいくのだ・・・!

※繰返しになりますが、「ヤギー」は、おやまのおうちの活動の中で使われている園内通貨です。

We Can

一般社団法人てとてでは、「里山ようちえん おやまのおうち」の運営を中心に、子どもの育ちや地域の居場所づくりに関わる活動を行っています。
自然保育、子どもの遊び場づくり、フリースクール、不登校支援、自然体験のガイド、講演会、イベント企画運営など、現場で実践してきたことがあります。
また、保護者や地域の人を巻き込みながら、コミュニティをつくっていくことも大切にしています。
保育・教育・地域活動を、机上の考えだけでなく、実際に動かしながら形にしていくことができます。

We Want

子どもの育ちを中心に考えながら、保育・教育・地域活動に関わってくれる人とつながりたいです。
須賀川の里山や文化を面白がり、一緒に活動を担ってくれる人。
イベントや地域プロジェクトを一緒につくっていける人。
子ども、保護者、地域が関わる場を、信頼関係の中で一緒に育てていける人と出会えたら嬉しいです。
教育や保育は、理論だけでも、気持ちだけでも成り立ちにくい仕事です。
だからこそ、考え方を共有しながら、一緒にアップデートしていける関係を大切にしたいです。

Next Relay

このバトンが、次へつながる。

大西ぱん 大西英遂さん

私と同じく、山ノ内町へ移住してパン屋さんを営む大西さんをご紹介します。

P.N.M ピザのもりやま 森山陽介さん

都会の人気店で修業を積んだ森山さん。今は山ノ内町でピザで長野を盛り上げることに取り組んでいる方なので、ご紹介したいと思いました。