石ではなく、人を見るようになった。有限会社小林石材店・小林明良さん
2026.10.10
Relay From 池田クリーニング商会の池田さんからご紹介いただいたのは、有限会社小林石材店の小林明良さん。
小林石材店は、お墓を建てることから戒名の彫刻、お墓じまい、石の加工や片付けまで、石に関わる仕事を幅広く手がけています。小林さんは、およそ五代続く家業に30歳を過ぎてから入りました。
「実家じゃなかったら、たぶんやってなかったと思います」
以前は競走馬が好きで、馬に関わる仕事を目指して乗馬の学校に通っていたこともあります。そんな小林さんが石材店の仕事に本気で向き合うようになったのは、家業に入ってしばらくしてから。それまであまり気にしていなかった会社の数字を見て、思ったそうです。
「このままだと潰れるな」と。
それを境に、仕事の見方が変わりました。石をきちんと加工し、施工することは当然。その上で、仕事を生むのは誰なのかを考えるようになった。
たどり着いたのは、「人」でした。
今では、仕事をいただいたお客様へ手書きのハガキを送り、お墓の用事がなくても立ち寄れる「縁側」のような石材店を目指しています。一方で、人が集まる場所をつくるだけでは会社は続きません。利益を残し、次の人へ渡せる会社にする。
小林さんが五代目として考える、石材店の仕事について伺いました。
馬の仕事がしたかった。30歳で五代目の家業へ
Q. 石材店で働くようになったきっかけは何だったのでしょうか。
A. 実家だったからですね。多分、実家じゃなかったらやってなかったと思います(笑)。うちは五代目くらいになります。ただ、自分はもともと競走馬が好きで、馬の仕事をしたいと思っていた時期もありました。乗馬の学校に1年通っていたこともあります。
家業に入ったのは30歳になってから。今の仕事は、基本的にはお墓に関わること全般です。一番多いのは、戒名をお墓に彫る仕事ですね。新しくお墓を建てることもありますし、お墓じまいもあります。工場があるので、「この石を加工してほしい」といった相談にも対応します。
神社にある狛犬のような石造物も、やろうと思えばできます。ただ、大きな石は切ってみないと中がどうなっているか分からないこともありますし、自分たちで全部つくることが一番いいとは限りません。その仕事が得意な人にお願いした方がいい場合もあります。
なので、自分の仕事としては、石そのものを扱うこともそうですけど、お客様の話を聞いて、どうするのが一番いいのかを考えることが中心ですね。

「このままだと潰れる」で、仕事の見方が変わった
Q. 仕事への向き合い方が変わったきっかけはありますか。
A. 家業に入ったばかりの頃は、売上とかあまり気にしてなかったんですよ。仕事も、正直そんなに面白くなかったです。石は石じゃないですか。「これ以上、何をやるんだろう」みたいな感じでした。でも、あるとき会社の数字をちゃんと見たら、
「このままだと潰れるな」
と思って。そこからですね。どうしたら売上が上がるのかも分からない。言ってみれば、溺れているのに、つかめる藁が何もない状態でした。その頃、日本石材工業新聞のオンラインセミナーを見たんです。最初に聞いたときは、「何言ってんだ、こいつ」と思いましたけど(笑)。でも、聞いているうちに少しずつ腹に落ちてきた。
「これをやって駄目なら、もう潰れるだけだな」と思って、実際にやってみたら成果が出ました。ただ、そのセミナーだけがきっかけだったとは思っていません。消防に入ったことも、YEGに入ったことも、JCに入ったこともそうです。
外へ出て、いろいろな人に会って、気になったらやってみる。そういうことを繰り返しているうちに、自分の考え方も変わってきました。どれか一つ欠けていたら、今ここにいるか分からないですね。

石ではなく、人を見るようになった
Q. 今、仕事で一番大切にしていることは何ですか。
A. 一番は、お客様のことを考えることです。昔は石にフォーカスしていたんです。でも、「売上って、どこから来るんだろう」と考えたときに、結局は人からなんですよね。
石をちゃんと加工する。基礎をきちんとつくる。施工をちゃんとする。そこは石屋として当たり前です。言ってみれば一段目です。その次の二段目が、人へのフォーカスだと思っています。お客様って、どんなにいい仕事をしても、時間が経てば忘れますよね。
すごくおいしい料理を食べても、その店から何の連絡もなければ、次に思い出してもらえるとは限らない。だから、仕事が終わったあとも、お客様との接点を続けるようにしています。うちで仕事をさせてもらったお客様には、最低3枚は手書きのハガキを出しています。
「お買い得品セールです」みたいなものではなくて、「今回ご縁をいただいて、ありがとうございました」というような内容です。それくらいのことなんですけど、全部手書きです。
僕は「アナログトランスフォーメーション」って言ってます(笑)。効率化できることはAIでもデジタルでもやればいいと思っています。そっちが得意なことは、どんどん使えばいい。
でも、自分の人となりを出すところまで全部デジタルにする必要はない。そこはアナログでいいと思っています。手書きで一言書いてあるだけでも、「ちゃんと覚えていてくれたんだな」と思ってもらえることがあります。できるだけ、自分がどういう人間なのかも出す。
仕事だけじゃなく、人として覚えてもらう。今はそこを大事にしています。

用事がなくても寄れる「縁側」のような石材店へ
Q. これから、どんな石材店にしていきたいですか。
A. 地域にとって、ホッとできる場所にしたいです。お墓を建てるとか、建てないとか、そういう用事がなくても寄れる場所。縁側みたいな感じですかね。
例えば、馴染みの車屋さんに行って、お茶を飲みながら2時間くらい話して帰るみたいな。そういう関係っていいなと思うんです。
「ちょっと寄っていこうかな」
と思ってもらえる場所。石材店って、お墓の用事がないと入りづらいと思うんですよ。でも、人が集まりやすい場所になれば、自然といろいろな話も入ってくる。誰かが困っていたら、「あの人に聞いてみたら」と紹介いただくことも、できることもある。そういう場所になれればいいです。
最近は、後継者がいなくて店を閉めるという話もよく聞きます。それって、もったいないなと思うんですよ。続けられれば、その会社から仕事も生まれるし、地域にもお金が回る。極端に言えば、続けられない理由の一つは、ちゃんと儲けられていないからだと思います。
だから、人が集まるいい場所にしたいという気持ちと、経営として成立させることは両方必要です。ホットハート、クールブレインじゃないですけど。気持ちは温かく。でも、お金の計算はちゃんとする。そこは分けて考えたいですね。
続けるために、ちゃんと利益を残す
Q. 会社を続けていくために必要なことは何だと思いますか。
A. 僕の中では、会社を続けること自体が「是」なんです。だから、感謝の対価はちゃんともらう。利益をちゃんと乗せる。そこを曖昧にしちゃ駄目だと思っています。
「地域のために」と言って、全部安くやって、自分たちが続けられなくなったら意味がないじゃないですか。次、どうすんの、ってなる。今の小林石材店を、そのまま自分の子ども世代に渡せるかと言われたら、まだ分かりません。
誰が継ぐにしても、ちゃんと利益が出て、続けられる仕組みをつくっておかないといけないと思っています。今はありがたいことに、仕事量としてはかなり多いです。家族経営なので、これ以上増えたらパンクするというくらい(笑)。
だから、単純に仕事をもっと増やしたいわけではありません。まずは、今ある仕事をきちんと回せる状態にする。その上で、次の人が引き継げる土台をつくる。人が集まれる会社にする。でも、それを続けられる利益もちゃんと残す。
その両方ができる会社にしていきたいです。

編集後記
家業だから入った石材店で、「このままだと潰れる」と気づいた小林さん。そこから、仕事の中心は少しずつ「石」から「人」へ移っていきました。
技術はできて当たり前。その上で、お客様との関係をつくり、利益をきちんと残し、地域に長く存在できる会社にする。
手書きのハガキも、縁側のような店づくりも、その考えの延長にあるのだと思いました。
関連リンク
We Can
お墓の建立・建て替え
戒名・法名などの追加彫刻
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墓石の修理・メンテナンス
石材の加工
石の撤去・片付け
「この石をどう処分したらいい?」といった相談
現地を見た上での石材に関する相談
石造物に関する相談
お墓や石に関する幅広い情報提供
We Want
現在はありがたいことに、家族経営としては仕事量がかなり多い状況です。そのため、単純に新しい仕事を増やしたいというより、仕事の質や技術を高めるためのつながりを求めています。
特に、石材加工の経験が豊富な方や、「こういう石ならこう加工した方がいい」「こういう現場ならこう納めた方がいい」といった知恵を持つ職人の方とは情報交換をしてみたいです。
また、設備投資や事業改善に活用できる補助金・助成金などについて、実務的な情報を持つ方とのつながりも歓迎です。
そして仕事とは別に、小林さんは自転車が好きです。
自転車屋さんや、自転車好きの方ともつながれたらとのこと。
何かあったときに仕事を頼める、相談できる。そんな仲間を少しずつ増やしていきたいと考えています。