段取り8割、仕事2割。高野新聞店・高野友志さんが毎日の配達で守るもの
2026.08.11
Relay From インライフ吉岡の吉岡睦生さんからご紹介いただいたのは、山ノ内町にある高野新聞店の高野友志さん
高野新聞店は、山ノ内町の中心部で新聞販売と配達を行う新聞販売店です。新聞だけでなく、書籍や本の販売、配送、夏にはスイカの物販なども行っています。
高野さんは、もともと新聞販売店を継ぐつもりではありませんでした。子どもの頃から身近にあった仕事でしたが、当時の印象は「休みがなくて大変そうな仕事」。それでも25、26歳の頃に、自分のこれからを考え、家業に入ることを決めました。
新聞社での2年間の研修を経て山ノ内町へ戻った高野さん。しかし、最初からうまくいったわけではありません。周囲にも自分にも厳しく、人間関係に悩んだ時期もありました。
そこから、家族の存在や周囲の支えを通じて、仕事への向き合い方が変わっていきます。今、高野さんが大切にしているのは、「段取り8割、仕事2割」という考え方。そして、家族、従業員、お客さん、地域の配達網を守っていくことです。
山ノ内町で、新聞と信頼を届ける仕事
Q. まず、高野新聞店ではどんなお仕事をされているのでしょうか。
A. 山ノ内町の繁華街の中心で、新聞販売店を経営しています。主な仕事は新聞の販売と配達です。新聞をお客さんに届けることが基本の仕事ですね。
それ以外にも、書籍や本の販売をしたり、たまに配送をしたりしています。夏にはスイカの物販をすることもありますよ。
Q. 新聞だけではなく、地域の中でいろいろなものを届ける仕事でもあるんですね。
A. 新聞販売店というと、新聞を配る仕事というイメージが強いと思います。もちろんそれが中心ですが、地域の中で毎日動いている仕事なので、配達や物販など、他のことにもつながっていく部分もあります。

山ノ内町で新聞販売店を営む高野さんに、家業に入った経緯を伺いました。
休みがなくて大変そうだった家業に、自分から入った
Q. 最初から新聞販売店を継ぐつもりだったのでしょうか。
A. 私はもともとはサラリーマンをしていました。若い頃は、本当にチャラチャラしていたというか(笑)、好きなことばかりやって生きていました。でも、25歳、26歳くらいになったときに、そろそろ自分の人生の道をちゃんと決めないといけないなと思うようになって。
実家が山ノ内町で新聞販売店をやっていたので、子どもの頃からこの仕事は身近にありました。ただ、その頃の自分には休みがなくて大変そうな仕事という印象が強かったんです。
だから、もともとは継ぐ気なんて全然ありませんでした。
Q. そこから、なぜ家業に入ろうと思ったのでしょうか。
A. それまで自由にやってきた分、これからは地元で仕事をしていきたいと思ったんです。それで腹を括って、「この仕事をやりたい」と父に伝えました。父はすぐに喜んで受け入れてくれました。
ただ、新聞販売店は、やりたいと言えばすぐに継げる仕事ではありません。新聞社の研修を受ける必要があって、そこに2年間行くことになりました。
Q. 研修ではどのようなことを?
A. 新聞販売店の経営や仕事の基本を学びました。配達のこと、販売店としてのこと、経営者としてのこと、いろいろなですね。その研修を経て、山ノ内町に戻ってきました。
戻ってきた頃は、周囲にも自分にも厳しかった
Q. 戻ってきてから、大変だったことはありますか。
A. ありますね。研修を終えて戻ってきた頃の自分は、かなり攻撃的だったと思います。自分で言うのも変ですけど、「ジャックナイフ」みたいな感じでした(笑)。
何かあればすぐに噛みついてしまうようなところがあって、当然、職場の人間関係もギスギスしてしまいました。
Q. 周囲に厳しかったんですね。
A. 周囲にも厳しかったですし、自分にも厳しかったと思います。実は神経質で、几帳面なところがあるんです。仕事でも家庭でも、自分の中で決めた順序通りに進まないと気が済まないようなところがありました。
とはいえ、現実は全部が思い通りに進むわけではありません。そこでストレスがたまっていって、精神的にも肉体的にもかなり追い込まれていました。あの頃は、本当に辛い記憶が多いです。

家族、従業員、お客さん。守るものが増えたことで、仕事への考え方も変わっていきました。
家族ができて、自分が変わらないといけないと思った
Q. そこから、どう変わっていったのでしょうか。
A. 大きかったのは家族の存在です。自分に守るべき家族ができたことで、このままの性格ではいけないと思いました。周りではなく、自分が変わらなければいけない、そう本気で思うようになりました。
それまでは、誰かに相談するタイプではありませんでした。でも、初めて心から相談できる相手ができたことは大きかったです。
Q. 自分一人で抱え込まなくなったんですね。
A. そうですね。振り返ると、研修時代も同期や周りの人たちに助けられていました。当時の同期とは、今でもお酒を飲む仲間です。
そういう周りの存在に気づけたことで、少しずつ自分の角が取れていったのかなと思います。今は、従業員を守りたいという気持ちもあります。お客さんはもちろんですけど、守るべきものは守っていきたい。
Q. 働き方の面でも、変えてきたことはありますか。
A. 昔の新聞販売店は、休みがないというイメージが強かったと思います。自分も子どもの頃はそう見ていました。でも、今は従業員が休みや有給休暇をしっかり取れるように、仕組みを整えています。働きやすい環境をつくることは、すごく大事だと思っています。
段取り8割、仕事2割
Q. 仕事をするうえで、大切にしていることはありますか。
A. 自分の信念としては、「段取り8割、仕事2割」です。何事も、事前の準備と段取りが大事だと思っています。そこがしっかりしていれば、仕事はスムーズに回ります。
新聞配達もそうです。毎日決まった時間に届ける仕事なので、行き当たりばったりではできません。人の配置、時間、ルート、天気。そういうものを考えて、前もって整えておくことが大事です。
Q. 段取りをかなり大切にされているんですね。
A. そうなんですが、今はこだわりを持ちすぎないことも大事にしています。昔の自分は、自分の理想やルールにこだわりすぎていたと思います。でも、人にはそれぞれのペースや考え方があります。自分のやり方をそのまま押しつけても、うまくいかない。
だから、段取りは大切にしながらも、人それぞれのやり方や考え方も認めるようにしています。
Q. 昔のご自身とは、そこが変わったところなんですね。
A. そうだと思います。貪欲な気持ちは、今も大事にしています。365日ずっと高い気持ちでいるのは難しいですけど、「いける」と思える瞬間や、今だと思うタイミングが来たら、そこにはしっかり力を入れます。
でも、それを人に押しつけない。そこは昔と変わったところだと思います。

新聞販売店の仕事、従業員との関わり、地域の配達網について話してくれた高野さん。
地域の配達網を、これからどう活かすか
Q. 高野新聞店としての強みは、どんなところにあると思いますか。
A. 地域の販売網があることです。新聞販売店なので、地域の中を毎日回っています。山ノ内町のことも、道のことも、地域の事情もある程度わかります。
そういう意味では、配達業や配送関係の方と業務提携をしたり、何か連携したりすることはできると思っています。
Q. 新聞配達の仕組みが、ほかの仕事にもつながる可能性があるんですね。
A. そう考えています。新聞販売店が持っている配達網や地域の情報は、もっと活かせる部分がある。新聞だけではなく、物を届けることや、地域の中で必要とされることに使えるかもしれません。
Q. 一方で、今の課題はありますか。
A. 配達員さんの不足です。毎日届ける仕事なので、人がいないと続けられません。そこは大きな課題です。
それと、山ノ内町は雪もあります。大雪が降ったときに、どこを何時に除雪しているのかがわかると、配達にもすごく役立ちます。
GPSなどで除雪の状況がわかる仕組みがあればいいなと思っています。そういうものを開発できる方がいたら、ぜひ話をしてみたいです。
いつか、地域の人が集まれる場所もやってみたい
Q. これから先、やってみたいことはありますか。
A. まずは今の新聞販売店をしっかりやっていくことです。家族もいますし、自分は一人の父親でもあります。家族を守ることは、何より大事です。
そのうえで、地域の中で仕事をしているので、今あるものを活かして、何かできることがあればやっていきたいと思っています。
Q. 新聞販売店以外にも、関心のあることはありますか。
A. 個人的な夢としては、いつか飲食店をやってみたいです。もともとお酒が好きというのもあります。子どもたちが無事に巣立ったら、山ノ内町で飲食店をやってみたいという気持ちはあります。
ただの居酒屋というよりは、地域の人が集まれたり、何かのきっかけが生まれたりするような場所にできたらいいですね。もちろん、まずは今ある新聞販売店と、地域の中で持っているものを大事にすることが先です。
Q. 最後に、これから仕事をしていくうえで大事にしたいことはありますか。
A. 動き続けることです。考えることも大事ですけど、動きながら考えることも大事だと思っています。止まらずに、できることをやっていく。
新聞販売店としても、地域の配達網としても、まだできることはあると思っています。今ある仕事を大事にしながら、前に進んでいきたいです。
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