遠くへ行くために、みんなで行く。瑞穂木材・宮崎淳貴が木島平で広げる木の仕事

2026.07.13

瑞穂木材株式会社 代表取締役社長 宮崎淳貴さん。木島平村で製材・木材加工の会社を営んでいる。

Relay From 有限会社松原商事 松原佳祐さん

瑞穂木材株式会社は、木島平村で材木の製材・加工を行う会社です。山で切られた木を製材し、柱や家の骨組みとなる材料として、工務店や大工さんへ届ける。昭和23年の創業以来、地域の木と家づくりをつないできました。現在、取り扱う木材の99%は県産材。4代目として会社を継いだ宮崎淳貴さんは、信州ウッドコーディネーターとして木育や講演にも取り組んでいます。

小さい頃から、会社はすぐそばにありました。けれど、最初から継ぎたいと思っていたわけではありません。一度外に出たことで、自分には「会社がある」ことに気づいた。そして今は、製材業を軸にしながら、木の価値や地域とのつながりを広げようとしています。

「早く行きたければ1人で行け。遠くへ行きたければみんなで行け」

その言葉を大切にする宮崎さんに、瑞穂木材の仕事と、これからの会社づくりについて伺いました。

地域の木を、家づくりへつなぐ

Q. まず、現在のお仕事について教えてください。

A. 瑞穂木材は、昭和23年創業の材木製材加工の会社です。山で切った木を製材・加工して、柱や家の骨組みとして工務店さんや大工さんに販売しています。もともとは祖父の兄が始めた会社で、私が4代目になります。戦後は、復興のためにこの地域の木も東京などへ多く運んだと聞いています。その後、私のご先祖が植樹をして、地産地消を目指してきました。現在は、取り扱っている木材の99%が県産の木です。また、信州ウッドコーディネーターとして、木育についての講演などもさせていただいています。

並ぶ木材の前で笑顔を見せる宮崎さん。木を扱う仕事を、もっと広く、もっと面白くしていこうとしている。

木の音と匂いのそばで育った

Q. 家業に入ることは、昔から考えていたのでしょうか?

A. 生まれも育ちも木島平村です。会社の裏が実家だったので、昔から毎日のように木の製材の音や匂いを身近に感じて育ちました。ただ、小さい頃から継ぎたいという気持ちがあったわけではありません。むしろ、どちらかというと実家を出たいという思いがありました。高校の進学と同時に実家を出て、上田西高校に進みました。

Q. そこから家業へ意識が向いたのは、なぜだったのでしょうか?

A. 実家を離れて、いよいよ進路を決める時に、自分にはみんなが持っていないものがあることに気づきました。家に帰れば会社がある。従業員さんがいて、トラックがあって、その周りにお客様がいる。これは、ほかの人は持っていないものだと思ったんです。それならそこに携わることを学んで帰りたい。そう考えて日本大学の建築学科に進みました。卒業後は、東京の木材商社で3年ほど経験を積んでから、木島平に戻ってきました。

入社当初から、父には「自分が65歳になったら代替わりだ」と言われていて。2025年4月に代表取締役社長に就任しました。

会社をどう続け、どう変えていくか。宮崎さんは、木材の話だけでなく、働く人や地域のこれからについても語ってくれた。

理想との違いの中で、まず自分が動く

Q. 地元に戻ってきて、大変だったことはありますか?

A. 東京から帰ってきた時に、自分が理想としていた会社とは違っていたことです。東京で働いていた会社は、比較的若い会社で、風通しもよく、意見が通りやすい環境でした。楽しく仕事ができていたんです。

その環境を経験していたので、地元に戻ってきた時に自分が思い描いていた働き方との違いを感じました。みんながもっと経営に近い考え方になって、自発的に動ける会社にしたい。そういうことを伝えたかったんですが、最初はなかなか分かってもらえませんでした。

年上の従業員さんに「分からない」と言われて、悔しい思いをしたこともあります。

Q. そこから、どう向き合ってきましたか?

A. まずは、みんなに認めてもらうために、従業員さんより仕事を多くやることを必死にやりました。自分が動いて、見てもらうしかない。会社を変えたいと思っても、一人で言っているだけでは変わりません。だから、まずは自分がやる。その上で、みんなが自分で考えて動ける会社にしていきたいと思っています。

「遠くへ行くために、みんなで行く」。宮崎さんの話には、会社を一人で引っ張るのではなく、社員と進んでいく姿勢があった。

遠くへ行くために、みんなで行く

Q. 会社づくりで大切にしていることはありますか?

A. 仕事を遊び、趣味にすることです。趣味を仕事にすると、趣味ではなくなって楽しくなくなってしまう。だから仕事そのものを楽しめるようにしたいんです。また、会社では、「みんなでやる」ということを大事にしています。掃除も、ごはんも、飲み会も、何をするにもみんなでやる。

「早く行きたければ1人で行け。遠くへ行きたければみんなで行け」

私が好きなアフリカのことわざです。この会社を永続していくためには、従業員さんの存在が大事だと思っています。会社では「当たり前約束10箇条」も制定しています。スローガンとして掲げているのは、「私たちに関わる全ての人を笑顔でハッピーにする企業」です。自分だけが進むのではなく、みんなで遠くへ行ける会社にしていきたいと思っています。

木の価値を、製材の外へ広げる

Q. 行政の取組みにも積極的に協力されているとお聞きしました。

A. 県の事業である信州ウッドコーディネーターとして、木材の広報や木育、講演、見学のお手伝いなどをしています。木のことを知ってもらう機会をつくることも、今の自分の役割の一つだと思っています。

最近では、アロマのプロジェクトにも取り組んでいます。木の枝葉は、通常であれば捨てられてしまうものです。それを蒸留して、エキスを抽出する。抽出する蒸留器は自作しました。そうすると、アロマに関わる人や、これまで木材とは別の分野にいた人たちとの交流が生まれます。

木材会社としての仕事を守るだけではなく、木をきっかけに新しい接点をつくっていきたいと思っています。

Q. SNSや動画発信にも取り組まれているそうですね。

A. 5、6年前にSNSを始めました。そこから、工務店さんや大工さんから依頼をいただくことも増えてきたので、動画編集やSNS発信を行うエムツープロモーションという会社を中野市に立ち上げています。

発信をすることで、木材会社としての見え方も変わります。木のことを伝える手段は、製材だけではありません。いろいろな形でつながりを広げて、それが本業を強くすることにもつながると思っています。

経験が、会社の力になる

Q. 社員さんにも、外での経験を積んでほしいという思いがあるのでしょうか?

A. あります。自分だけではなく、従業員さんにもいろいろな経験を積んでほしいと思っています。会社の中だけでは見えないこともあります。いろいろなことを経験すると、自分のためにもなるし、会社のためにもなる。

アロマのプロジェクトも、社員さんの発案から始まった取り組みです。社員さんがやりたいと思ったことに対して、できるだけ口を出しすぎないようにしています。自分自身、細かく言われすぎると、せっかくの仕事がつまらなくなってしまう感覚もありました。

任せることで、本人の経験にもなる。その経験が、会社にとっても新しい力になる。

土曜日を休みにして、その時間を副業や別の経験に使うことも、考え方としてはありだと思っています。会社にいる時間だけではなく、外で得た経験がまた会社に戻ってくる。そういう形もつくっていきたいです。

端材から生まれた木のおもちゃ。販売はしていないものの、楽しみにしている人もいるという、瑞穂木材の小さな人気者。

帰ってきたくなる地域に

Q. 今後、どんな会社や地域にしていきたいですか?

A. まずは、この地域を存続させていきたいという思いが一番です。若者が出ていってしまう原因は、地域に魅力がないのか、仕事がないのか、いろいろあると思います。でも、また帰ってきたいと思える地域にしたい。そのためには、地域の大人が楽しんでいないといけないと思っています。

自分たちを見て、「帰ってきたい」と思ってもらえるような大人でいたいです。今までは、自分が持っているものを活かして会社を多角化していくことを考えていました。でも、まったく違うものを始めることで、それが新しいつながりになるのではないかとも考えています。

今はとにかく、つながりをたくさん広げて、今ある本業をより強くしていきたいです。木を扱う会社として、この地域でできることはまだあると思っています。


編集後記

宮崎さんの話には、会社を継ぐ人というより、会社を使って地域との接点を増やしていく人という印象がありました。
木を製材する仕事を軸にしながら、どこまで広げていけるか。その動きの多さが、宮崎さんらしさなのだと思います。

We Can

瑞穂木材株式会社では、県産材を中心とした木材の製材・加工を行っています。
山で切られた木を、柱や家の骨組みとなる材料として加工し、工務店さんや大工さんへ届けています。
木材に関する相談や、家づくりに使う材料についての相談にも対応できます。
また、信州ウッドコーディネーターとして、木育、講演、会社見学、木材に関する学びの場づくりのお手伝いも可能です。
木の枝葉を活かしたアロマプロジェクトや、SNS・動画発信の経験もあります。
木のことはもちろん、木をきっかけにした発信や地域資源の活用についても、一緒に考えることができます。

We Want

人材不足に関して、地域の中で人材をシェアできる仕組みに関心があります。
このシーズンだけ人を借りる、逆に人を貸すなど、地域の事業者同士で助け合える形があればありがたいです。
また、木材、山、地域資源を活かした新しい事業連携にも関心があります。
木育や地域教育、アロマや香りのプロダクト開発、SNSや動画を使った発信など、木を軸に新しい接点をつくれる方とつながれたら嬉しいです。
個人的には、ゴルフ仲間も募集しています(笑)。

Next Relay

このバトンが、次へつながる。

スマイルホーム 湯本大光さん

みゆきの青年会議所の先輩で、積極的に地域を盛り上げている方。頼まれたことは断らない人で、「木島平と言ったらこの方」です。