壊す仕事だからこそ、雑にしない。山本興業・山本真也が貫く「丁寧な解体」

2026.05.01

株式会社山本興業 山本真也。カメラに背をむけ現場を見る。

Relay From 株式会社Lien 小林裕さん。

建物の解体工事と聞くと、重機で一気に壊していく光景を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、株式会社山本興業の代表・山本真也さんが大切にしているのは、できる限り手作業で、建物に込められた思いをたどるように壊していくこと。家を建てた時の骨組みにもう一度戻し、住んできた人の記憶、近隣への配慮、そして次にその土地を使う人のことまで考える。

昔は決して優等生ではなかったと語る山本さん。しかし現在の姿は、穏やかで、誠実で、ただひたすら自分の事業と向き合う経営者そのものです。「壊す仕事だからこそ、雑にしない」。その言葉の奥にある、山本興業の仕事観と未来への思いを伺いました。

家を建てた時の姿に、もう一度戻してから壊す

Q. 山本興業が大切にしている「丁寧な解体」とは、どのような仕事なのでしょうか?

A. うちでは「7割手作業」を一つのスローガンにしています。解体屋というと、重機でガチャガチャ壊していくイメージがあるかもしれません。でも私たちは、できるだけ手で外し、掃除をしながら、最後に重機を入れるようにしています。

特に木造住宅では、建てた時の骨組みの姿まで戻すことを大切にしています。家を建てた時、お客様はその骨組みを見ているんですよね。20代、30代で建てた家を、80代になって解体する。その時に、もう一度“建前”の時の姿を見てもらう。そこに、その家で過ごしてきた時間や思いが表れると思っています。

もちろん、手間はかかります。同業者からも「そこまでやるのか」と言われることがあります。でも、丁寧に解体すれば、飛散物も少なくなり、近隣への迷惑も減らせます。地中に細かなゴミを残しにくいので、次にその土地を使う人にもつながっていく。

壊す仕事ではありますが、ただ壊せばいいとは思っていません。前に住んでいた人にも、近所の人にも、次に使う人にも、できるだけ迷惑をかけない。それが、うちの解体のあり方です。

木造家屋解体工事。「家を建てられた時の想い」を大切にしている言葉のとおり、綺麗な状態の建前が確認できる。

中学生の頃に見た、現場を動かす親方の姿

Q. 解体業の道に進まれたきっかけを教えてください。

A. 始めようと思ったのは、中学生の時です。当時、学校にはあまり行かずに働いていて、解体屋さんや足場屋さんの現場に行っていました。その時に見た親方の姿が、とにかくかっこよかったんです。現場で指揮をとって、人を動かして、仕事を進めていく。その役割や姿に惹かれて、「自分も絶対に社長になろう」と思いました。本当に直感でした。

中学を卒業してすぐ、中野市の解体業者に就職しました。そこで出会った社長が、一般的な解体屋とは違うスタイルの方でした。

手間をかけて、綺麗に壊す。

騒音やほこりが出やすく、クレームがつきものの仕事の中で、その会社は近隣の方への配慮を徹底していて、クレームもほとんどありませんでした。その仕事ぶりを見て、「このやり方をもっと広めたい」と思うようになりました。社長にもそう話したのですが、その方は「自分は小規模のままでいい」と。そして、私の独立を後押ししてくれました。もともと入社した時から、いつか独立したいという話はしていました。最初は29歳の8月31日までに、と考えていましたが、結果的には22歳で独立しました。

開業日は9月1日です。これは、師匠でもあるその会社の創業日と同じ日です。個人事業から始まり、丸8年が経ちました。法人としては、今4期目に入っています。

人に環境・時間・チャンスを与える理由

Q. 経営者として、これまでどのような壁がありましたか?

A. たくさんありました。中でも一番大きいのは、人との向き合い方です。お金のことは、死に物狂いで働けば何とかなる部分もあります。でも人間関係は、今でも経営の大きな課題だと感じています。

独立当初は、若い子たちと一緒に始めました。ただ、すぐに辞めてしまう子もいれば、お金を借りたままいなくなってしまう子もいた。仕事柄、やんちゃな子が来ることもありますし、現場で問題を起こしてしまうこともありました。

それでも私は、会社のトップとして、できる限り「環境・時間・チャンス」を与えたいと思っています。時には厳しく言うこともあります。でも、最初から見放すのではなく、長い目で向き合いたい。

というのも、自分自身も決してまっすぐな子どもではなかったからです。学校にきちんと通えていたわけでもないし、周りに迷惑をかけたこともありました。それでも、働く場所や向き合ってくれる人、変わるための時間を与えてもらったから、今の自分があります。

だから社員にも、仕事を通じて少しずつでもいい方向に変わっていってほしい。うまく伝わらないこともあります。それでも、同じ方向を向いて進める会社でありたいと思っています。

解体業を、いろんな人が働ける場所にしたい

Q. これからの展望をお聞かせください。

A. 会社の規模は、もっと大きくしていきたいです。解体工事には、作業員、トラック、重機、産業廃棄物の処理など、いろいろな役割があります。将来的に中間処理場のような場所を持てれば、現場作業だけではなく、工場のような勤務体制も作れるかもしれません。そうなれば、年配の方、障がいのある方、女性など、いろいろな人が働ける環境を作れる可能性があります。

地域のために何かをしたいという思いはあります。ただ、大きなことを言うよりも、まずは自分の会社でできることを増やしていきたい。人とのつながりの中で、地域に何が足りないのか、何に困っているのかを聞きながら、中野市の活性化につながるような会社にしていけたらと思っています。

@yamamotokougyou0

株式会社山本興業です! おかげさまで創立7周年を迎えました。創立から現在までの道のりをご紹介します😌 #山本興業

♬ 栄光の架橋 – YUZU

山本興業のSNSから引用

編集後記

山本さんの話を聞いて印象的だったのは、言葉の強さよりも、仕事への向き合い方のまっすぐさでした。解体という仕事は、外から見ると「壊す仕事」に見えるかもしれません。しかし山本興業の仕事には、そこに住んできた人、近隣の人、次にその土地を使う人への配慮があります。

また、社員に対しても同じように、すぐに答えを求めるのではなく、環境と時間とチャンスを与えながら向き合おうとしている。無骨で、派手ではない。けれど、一つひとつの仕事に誠実であること。その積み重ねが、山本興業という会社の信頼をつくっているのだと感じました。

We Can

山本興業の強みは、建物に込められた思いや、近隣・次の土地利用まで考えた「丁寧な解体」です。
「7割手作業」を掲げ、骨組みまで戻すように一つひとつ手をかけることで、飛散物や地中に残る細かなゴミを抑え、解体後の土地まできれいに整えます。また、平均年齢23〜24歳という若いチームと、重機・トラックを備えた機動力も強みです。災害時など、地域で迅速な対応が必要とされる場面でも力を発揮できる体制を目指しています。

We Want

解体工事の質をさらに高めるために、設備、電気、外構など、周辺業種の知識をより深く学んでいきたいと考えています。次に現場に入る事業者が何を必要とするのかを理解できれば、解体の段階でより良い準備ができ、お客様の負担軽減にもつながります。建築・設備・外構・不動産など、さまざまな分野の方と知恵を共有しながら、より質の高い仕事につなげていきたいです。

Next Relay

このバトンが、次へつながる。

株式会社竹原建材 竹原雄太さん

もともとは長野市方面の会社に勤めていましたが、昨年独立された若い経営者です。重機を扱う技術が高く、運送にも強みを持っている方です。