ペースを上げ下げせず、長く走る。食事処しんしゅう・山崎稔明さん

2026.09.22

食事処しんしゅう 山崎稔明さん。店舗の前にて。

Relay From 水橋酒店の水橋さんからご紹介いただいたのは、食事処しんしゅうの山崎稔明さん。。

食事処しんしゅうでは、そば、うどん、定食、お弁当を提供し、2階では宴会にも対応しています。出前や配達も続けています。山崎さんが本格的に飲食の仕事へ入ったのは20代半ば。もともとご両親が始めた店で、高校生の頃から「いつかは自分がやるんだろうな」と思っていたそうです。

一方で、それまでの生活の中心にはサッカーがありました。飲食の仕事に本気で入ると、夜は仕事。練習には行けない。好きなことをする時間もなくなっていく。一度は生活のバランスを崩しかけました。そこから始めたのが、マラソンでした。自分の空いた時間で走る。体を動かす。そうすると、むしろ仕事の調子も良くなる。今はサッカー、マラソン、冬のスキーを続けながら店に立っています。

そして店についても、「流行を追うより、一定のペースで長く続けたい」と話します。山崎さんが見つけた、仕事と暮らしのペースについて伺いました。

いつかやると思っていた家の食堂へ

Q. 食事処しんしゅうで働くようになった経緯を教えてください。

A. もともと両親が始めた店です。高校生くらいの頃から、いつかは自分がやるんだろうな、とは思っていました。

ただ、20代の前半までは、好きなことをやっていました。自分の場合はサッカーです。サッカーをできる環境を一番に考えて、練習に行かせてもらったりしながら働いていました。

でも、24歳、25歳くらいになって、「そろそろちゃんとやらないと」と思うようになりました。いずれ家に戻るなら、ちゃんと仕事として覚えよう、と。資格も取って、ほかのお店でも働かせてもらいました。

何軒か経験して、家に戻ったのは33歳くらいです。だから、急に「家業を継ぐぞ」と決めたわけではなくて。自然な流れではあったけど、20代半ばで一度、「これを仕事としてちゃんとやる」と決めた感じですね。

仕事だけになって、バランスを崩した

Q. 飲食の仕事に本格的に入って、大変だったことはありますか。

A. やっぱりこの業界は厳しいです。「心臓を捧げろ」じゃないけど(笑)、24時間全部仕事に尽くせ、みたいなところがありました。よそのお店で働いているときは、親方の言うことを聞いて、仕事を覚えて。

それまで自分がやっていたサッカーなんかは、まるっきりできなくなりました。そこが一番きつかったですね。仕事の内容そのものは、「こういう世界なんだろうな」と思っていたので、なんとかやっていました。でも、プライベートとの両立ができなかった。

好きなことが何もできない。「これでよかったのかな」と思うこともありました。体調も崩しかけました。仕事だけに全部振ってしまうと、自分の場合はうまくいかなかったんだと思います。

それで、ある時期から「好きなこともちゃんとやろう」と思うようになりました。時間がないなら、ないなりに作ろうと。そこから少しずつ、仕事も生活も回るようになりました。

走る時間をつくったら、仕事も回るようになった

Q. そこから、どうやって働き方を変えていったのでしょうか。

A. サッカーはずっと好きでした。子どもの頃からやっています。ただ、サッカーは集団スポーツなので、みんなと時間を合わせないといけないですよね。普通の日勤の人なら、仕事が終わって夜に集まって練習できます。でも僕ら飲食の仕事って、その時間が仕事なんです。みんなが仕事を終えた頃から忙しくなる。だから、なかなか練習に行けない。

その中で、一人でできるランニングはずっとやっていました。30歳くらいの頃に、「じゃあマラソンに出てみようかな」と思ってエントリーしたんです。やってみたら、それが楽しくなって。マラソンは、自分の空いた時間でできます。誰かと時間を合わせなくてもいい。自分で時間を調整すれば走れる。それが、自分の仕事にはすごく合っていました。

最初は、仕事で疲れているのにさらに走ったら余計疲れるんじゃないかと思いますよね。でも、逆でした。体を動かすと調子が良くなる。リフレッシュにもなるし、仕事にも耐えられるようになる。「これ、両方やった方がいいな」と思いました。

結局、仕事って健康じゃないとできないじゃないですか。周りを見ても、仕事熱心でずっと頑張っていた人が、体を壊してしまうこともありました。それを見ていると、やっぱりバランスは大事だと思います。今は、サッカー、マラソン、冬はスキー。この3本柱です。どれか一つだけというより、年間を通してその3つをやっている感じです。

サッカーでは走り続ける体力が必要ですし、マラソンはそのまま持久力につながる。スキーは体幹を使います。結果的に、全部つながっている気がしますね。

40年前から変わらない食事処しんしゅうの店内。

「1個2個で悪いね」に、「いいんだよ」と届ける

Q. お店を続ける上で、大切にしていることは何ですか。

A. 地元の人に愛される店でいたい、というのが一番です。連休になると県外から旅行で来てくれる方もいます。冬は海外からのお客さんも増えます。本当にありがたいことです。

でも、ベースはやっぱり中野の人たち。中町の方々、そして中野市内。そこは大事にしたいと思っています。うちは出前もやっているので、おじいちゃん、おばあちゃんの家に届けることもあります。

「1個、2個しか頼まなくて悪いね」と言われることがあるんです。でも、「いいんだよ。気兼ねなく電話してね」と言ってみたり。届けて終わりじゃなくて、できるだけ一言二言話すようにしています。向こうがどう思っているかは分からないですけど(笑)。でも、そういうやり取りは大事にしたいですね。気軽に電話してもらえる店でいたい。

冬は外国のお客さんも結構来ます。志賀高原や野沢温泉、妙高の方から来る人もいます。自分もスキーをやるので、

「今日はどこで滑ってきたの?」

みたいな話ができるのは楽しいですよ。でも、外国の人が来るから店を変える、という感じではなくて。地元の人がいつも使ってくれる店があって、そこに旅行の方や海外の方も来てくれる。

それくらいが、うちにはちょうどいいと思っています。

ペースを上げ下げせず、長く走る

Q. これから、どんなお店にしていきたいですか。

A. 基本的には、このままでいいかなと思っています。もちろん、細かいところは微調整もある。でも、大きく何かを変えたいという感じではないですね。

流行もありますし、人の流れも変わります。経済状況も変わる。でも、お店は変わらないようにしていきたい。うちはうちのペースでやっていければいいと思っています。

「あの店、昔からあるよね」

って言われるような店でいたいです。マラソンで言うと、ペースを上げたり下げたりしすぎないことです。最初に飛ばしすぎると、後半きつくなる。逆に落としすぎても前に進まない。一定のペースで走るのが理想です。

店も同じなのかなと思っています。できれば、長く続けたい。そのためには、無理をしないことも大事です。うちは昔からアナログなところが多いので、レジや売上のデータ管理なんかはもう少し楽にできたらいいし、SNSもできたらいいとは思います。

でも、それで店を大きくしたいとか、そういうわけではなくて。人手もなかなかありませんので機械や仕組みに頼れるところは頼る。人がやらなくてもいいことは、少し楽にする。そうやって、今の店を無理なく続けていければいいと思っています。

仕事も、好きなことも。どちらか一方に全部振るんじゃなくて、両方を続ける。店もマラソンみたいに、ペースを上げ下げせず、長く走れたらいいですね。

記事画像
食事処 しんしゅう
地元食材をふんだんに使った、郷土料理をぜひお召し上がりください。
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編集後記

若い頃は、仕事をするなら好きなことを諦めるしかないと思っていた。でも、走る時間を取り戻したことで、体調も仕事もむしろ整っていった。

だから今は、何か一つに全部を注ぎ込むより、無理なく続けることを大切にしています。流行に合わせて大きく変えるより、「1個2個でもいいよ」と出前を届けながら、いつ行ってもそこにある店でいる。

ペースを上げすぎないことは、止まることではありません。長く走るための、山崎さんなりの続け方なのだと思いました。

We Can

そば・うどん・定食の提供
お弁当
出前・配達
2階宴会利用
地域の会食・集まりへの対応
中野市内での食事相談
スキー・サッカー・マラソンなど地域スポーツの情報交換
北信地域のスキー場や冬の過ごし方に関する会話・情報交換

We Want

食事処しんしゅうは、店の形そのものを大きく変えるより、今の営業を無理なく長く続けていきたいと考えています。
一方で、人手が限られる中、レジや売上データの管理など、機械や仕組みに任せられる部分はもう少し効率化したいです。
昔からの営業スタイルを大きく変えずに導入できるPOSレジや、小規模飲食店向けのデータ管理、日々の事務作業を楽にする仕組みなどに詳しい方がいれば、話を聞いてみたいです。
SNSについても、無理なく続けられるやり方があれば知りたいと思っています。