つなぎのオヤマボクチから育てる。八方味人・畔上清加さんが広めたい蕎麦
2026.09.13
Relay From 今回ご紹介するのは、株式会社木の心・小林翔太さんからバトンを受け取った、信州おやまぼくち蕎麦 八方味人の店主、畔上清加さんです。
八方味人では、つなぎに「オヤマボクチ」を使った蕎麦を提供しています。畔上さんは、飯綱町でオヤマボクチを自ら栽培しています。
つなぎをつくる人が減っていること。自分が使いたいものだから、自分で育てた方が安心できること。自信を持ってお客様に出せること。
蕎麦を打つだけでなく、つなぎから自分で向き合うことが、畔上さんの店づくりの土台になっています。
母方の実家がある須賀川は、オヤマボクチ蕎麦が盛んな地域です。幼い頃から蕎麦のある環境に触れ、祖父が生前に抱いていた「蕎麦をやりたい」という思いを、自分が受け継ぎたいと考えるようになりました。
知られていない蕎麦をどう伝えるか。オヤマボクチ蕎麦をどう継承していくか。
畔上さんは、店と畑の両方から、この蕎麦を広めようとしています。
つなぎのオヤマボクチから、自分で育てる
Q. どんなお蕎麦を出しているのでしょうか。
A. オヤマボクチをつなぎに使った蕎麦を出しています。私は、飯綱町でオヤマボクチも栽培しています。
畑も持っていて、自分で育てています。蕎麦のつなぎをつくる人が減ってきているので、自分でやらないと間に合わないということもあって。
でも、それだけではありません。自分で使いたいつなぎなので、自分でつくった方が安心できます。安全だし、自信を持って使える。
お店で出すものだから、自分で向き合えるところは向き合いたいと思っています。
オヤマボクチ蕎麦を広めたいというのが、店の大きなテーマですね。私は、オヤマボクチじゃなければ、この店はやらないと思っています。
須賀川の蕎麦文化と、祖父の思い
Q. 蕎麦屋を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
A. 母方の実家が須賀川にあります。小さい頃から、そこに頻繁に遊びに行っていました。須賀川は、蕎麦の町でもあります。蕎麦農家さんもいますし、蕎麦屋さんもある環境で育ちました。その中でも、オヤマボクチの蕎麦が有名な場所です。ただ、オヤマボクチ蕎麦は、まだ多くの方に広まっているわけではありません。その蕎麦を広めたいと思ったことが、きっかけの一つです。
もう一つは、母方の祖父です。祖父は生前、蕎麦をやりたいという夢を持っていました。その話を祖母から聞いて、私がその思いを受け継ぎたいと思うようになりました。祖母は、私が小さい頃はイベントの度に蕎麦を打ってくれる人で。ただ、その頃は蕎麦よりもうどん派でしたが(笑)。
私にとって身近にあった蕎麦ですが、年々、その良さを感じるようになりました。自分で蕎麦を始めてみて、なおさら。奥が深いんです。そば粉によっても変わりますし、水とそば粉の大切さも感じます。知れば知るほど、簡単ではない仕事だと思います。
知られていない蕎麦を、どう伝えるか
Q. 始めてから、大変だったことはありますか。
A. 最初は、いいづなリゾートスキー場で2年間営業していました。立地の関係もあって、集客には困りました。当時は経営も初めてで。そこで、SNSでの発信を強化して、毎日投稿することを意識していました。最近ではスマホで飲食店を探す方が多いので。
それをきっかけに、メディアに見つけてもらい発信いただけるようになって。2年目からは、ワンオペでは足りなくなるくらい集客効果が得られました。スキー場という立地でしたが、シーズンオフの方が売上が出るようにもなりました。
もともと、いいづなリゾートスキー場を運営している会社の飲食店で修業していた経緯があり、ご厚意で場所を貸していただいていました。ただ、いずれは出なければいけない状況でもありました。離れたくないという気持ちもありましたが、営業しながら次のテナントを探して、知り合いから紹介を受けて。それで今の場所に移りました。
大変だったことは、集客だけではありません。オヤマボクチをつなぎとして使っている蕎麦が、まだ認知されていないことも大きいです。戸隠蕎麦などは一般的に知られていますが、オヤマボクチ蕎麦はそれとは違う。二八蕎麦とも違います。新潟のへぎそばに近い部分もありますが、つなぎが違います。味も、風味も、食感も違う。だからこそ、値段の違いも含めて、どう伝えるかが難しいですね。
今の店舗では、二八蕎麦もメニューに取り入れています。オヤマボクチ蕎麦だけではなく、二八蕎麦との2本立てにしました。食べ比べることで、違いを感じてもらえる部分もあると思っています。
水とそば粉だけだからこそ、素材にこだわる
Q. お店で大切にしていることはありますか。
A. オヤマボクチ蕎麦を広めたいということ。それが大前提です。
そば粉については、信州産のそばを使うことにこだわっています。長野県でやらせてもらっているので、信州産のそばを使いたいと思っています。製粉会社さんのそば粉も使っていますが、オヤマボクチ蕎麦に使うそば粉は、自分で挽いています。種の状態から仕入れて、製粉して。自分で製粉した方が新鮮ですし、蕎麦の黒さや、どうしたら風味が出るかを調整できます。
蕎麦は、水とそば粉で変わります。だからこそ、水もそば粉も大切です。素材に向き合わないと、思ったような蕎麦にはなりません。
一方で、店としては、蕎麦だけではなく、食事として満足してもらうことも大切にしています。このあたりはサラリーマンの方も多い場所です。蕎麦だけでは足りない方もいるので、ご飯ものも用意しています。かつ丼、とろろ、やたらなど、いろいろな丼ものですね。
飲食店で勉強してきたことも活かしながら、オヤマボクチ蕎麦を食べてもらいやすい店にしていきたいと思っています。
この蕎麦を、もっと多くの人に食べてもらう
Q. これから、どんなことを目指していますか。
A. 今後も、いろいろな方にこの蕎麦を召し上がっていただけるようにしていきたいです。オヤマボクチ蕎麦を継承していくこと。それが大きな目標です。
このお店だけで終わらせるのではなく、店舗数も増やしていきたいと思っています。長野だけではなく、全国的にも広げていきたい。そして、日本の食文化として、海外の方にも食べていただきたいと考えています。
始めるときには、いろいろな方から反対もされました。一方で、「やってみたら」と言ってくれる方もいました。自分の強みがあるとすれば、行動力だと思っています。蕎麦職人になろう、店をやろうと思って、動いてきました。これからも、オヤマボクチ蕎麦を広めるために、できることを続けていきたいです。

We Can
おやまぼくち蕎麦の提供
二八蕎麦の提供
信州産そば粉を使った蕎麦
自家栽培のおやまぼくちを使った蕎麦
蕎麦と丼もののセット
かつ丼、とろろ、やたらなどの食事メニュー
蕎麦文化・おやまぼくち蕎麦に関する発信
飯綱町でのおやまぼくち栽培
飲食店運営に関する経験共有
SNS発信・メディア対応の経験共有
We Want
お店を続け、これから店舗数を増やしていくことを考えると、味や蕎麦へのこだわりだけでなく、運営の仕組みも整えていく必要があります。
整理整頓やバックヤードの管理、事務面、法人化を見据えた経営管理など、苦手な部分を支えてくれる方とつながれたらありがたいです。
また、おやまぼくち蕎麦をもっと多くの方に知ってもらうために、発信やイベント、販路づくりで一緒に動ける方ともつながりたいです。
長野だけでなく、県外や海外の方にもこの蕎麦を食べてもらえるように、広げ方を一緒に考えていけたらと思っています。