簡単に倒せない木を、安全に伐る。株式会社木の心・小林翔太さんの仕事

2026.08.16

株式会社木の心 小林翔太さん。森の中で。

Relay From FARMERs STYLEの金子真一朗さんにご紹介いただいたのは、株式会社木の心 代表取締役社長、小林翔太さんです。

小林さんが手がけているのは、林業の中でも「特殊伐採」と呼ばれる仕事です。

山に入って木を倒し、市場に出す一般的な林業とは少し違います。庭木や線路沿いの木、建物の近くにある木など、簡単には倒せない木を、ロープワークを使って上から少しずつ伐っていきます。

まだ全国的にも知られている仕事ではありません。小林さん自身も、もともとは山に入る林業をしていました。庭の木を切ってほしいと頼まれたとき、ロープワークの技術がなく「できない」と答えたことが、特殊伐採を始めるきっかけになりました。

木を伐る仕事でありながら、小林さんが見ているのは、木をなくすことだけではありません。子どもたちが山に入れること。人と動物が共に生きられる山を考えること。特殊伐採の仕事の先に、山との関わり方をもう一度つくろうとしています。

簡単に倒せない木を、上から少しずつ伐る

Q. 株式会社木の心では、どんなお仕事をされているのでしょうか。

A. 特殊伐採です。林業の中でも特殊伐採という仕事になります。通常であれば、山に入って木を切り倒して、それを市場に出すという形が多いと思います。僕の場合は、庭木や、線路沿いの木なども扱っています。簡単に倒せない木を、ロープワークを使って上から切っていく仕事ですね。

Q. 上から少しずつ切っていくんですね。

A. そうです。ロープを縛って、どういうシステムで、どうやって安全に、きれいに落としていけるかを考えて。

ご依頼をいただいたら、見積もりを作成するのは勿論ですが、お客様に「こういう方法で伐っていきます」とご説明しています。ただ切るだけではなくて、周りに建物があったり線路があったりするので、安全に落とす方法をケースに応じてご提案しています。

Q. 庭師の仕事とは、また違うのでしょうか。

A. 庭師さんは、園芸としてきれいに見せる仕事だと思います。僕の場合は、管理できなくなった木や、危険な木を安全に伐る仕事。剪定もしますが、剪定に加えて伐採をするような感じです。

この仕事自体、全国的にもまだ新しい仕事で。昔でいうと杣夫(そまふ)や空師に近いかもしれません。このあたりで同じような仕事をしていて、つながっている人でも僕が知っている範囲では2人くらい。かなりマニアックな仕事だと思います。

特殊伐採を始めたきっかけと、山への思いを小林さんに伺った。

庭の木を切れないと言ったことが、特殊伐採を始めるきっかけになった

Q. 特殊伐採を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

A. もともとは林業をやっていて、山に入っていました。その中で、お客さんから「庭の木を切ってほしい」と言われることがあったんです。でも、当時はロープワークの技術がありませんでした。だから「できないです」と言ったんです。

そうしたら、「マジか」という顔をされたんですよね。

Q. そこから、どうにかできないかと考えたんですね。

A. そうです。どうにかできないかなと思って調べていくと、アーボリストや空師という仕事があることを知りました。それを見て、「これをやるしかない」と思ったのがきっかけです。

Q. もともと山や自然には近い環境だったのでしょうか。

A. 地元が志賀高原なので、山に囲まれている生活でした。下高井農林高校で林業や畜産の勉強もしていました。最初から林業をやると決めていたわけではないですが、なんやかんや山に関わることが多かったです。

一番は、山や自然が好きだったことですね。

ただ、山がだんだん整備されなくなってきていると感じていました。入っちゃダメと言われることも増えてきた。そういうことを、少しでもなくしたいと思っています。

知られていない仕事を、少しずつ知ってもらう

Q. 仕事を広げていくうえで、大変だったことはありますか。

A. 毎日大変ですよ。まず、特殊伐採という仕事自体が知られていません。どうやって認知してもらうかは、ずっと考えてきました。少し前までは、YouTubeやSNSで投稿していました。でも、それだけでは集客にはつながりませんでした。

Q. そこから、どのように知ってもらっていったのでしょうか。

A. 法人会に入ったり、他の業者さんに営業活動をしたりしました。「こういう仕事をしています」「こういう場面で使えることはありませんか」と、自分から伝えていきました。

そうやって種をまいてきたものが、少しずつ芽が出始めている感じですね。

Q. 事業者の方から広がっていったんですね。

A. そうですね。個人のお客様ももちろんいますが、事業をやっている方に認知してもらうことは大きいです。そこから口コミで紹介いただいて、少しずつ広がってきました。

今、やっと土台ができてきたところです。

特殊伐採は、ロープワークを使って簡単に倒せない木を上から少しずつ伐っていく。取材では木に登る様子をお見せいただいた。

切って終わりではなく、木の一部を残す

Q. 仕事をするうえで、大切にしていることはありますか。

A. たくさんありますよ。まず、絶対に無理だと思われているような木でも、どうすれば安全に伐れるかを考えます。簡単に倒せない木だからこそ、ロープを使って、上から少しずつ切っていく。そこはこの仕事の大事なところです。

Q. 伐採する木に、思い入れがあるお客様もいますよね。

A. 庭にずっとあった木とか、家族にとって思い入れのある木がそうですね。そういう木を伐ったときに、ただなくして終わりではなくて、切った木で工作のようなことをすることがあります。

僕自身、キャンプが好きなのもあって、木でコップやお皿を作って、無料でプレゼントすることがあります。

Q. 木の一部を、形にして残すんですね。

A. そうです。伐採は、木をなくす仕事に見えると思います。でも、思い入れのある木なら、何らかの形で残せた方がいい。そういう形でもお返して喜ばれるのはうれしいですね。

危険な仕事だからこそ、一人作業はさせない

Q. 現場で大切にしていることはありますか。

A. 絶対に一人では作業させないことです。特殊伐採は、林業の中でもかなり難しい仕事だと思います。受け口や追い口を作ることは、普通の伐採でも必要です。それを木の上でやらなければいけない。だから難度は高いです。

Q. 高所での作業ですし、危険もありますよね。

A. 僕自身、昔ケガをしてドクターヘリで運ばれたことがあります。だから、一人作業は絶対にさせません。

何かあったときに助けられる人がいること。無理なら交代できること。疲れたら休めること。そこは大事にしています。

Q. チームの雰囲気も大切にされているんですね。

A. はい。今は正社員が一人いて、個人事業主の方にも来てもらって、全体で5~6人のチームでやっています。

社長だから偉いとか、そういうのはあまりありません。危険な仕事だからこそ、気軽に話せる環境の方がいいと思っています。

「疲れたら休めばいい」「無理なら交代すればいい」と言える関係。トップダウンでギクシャクするより、現場で声をかけ合える方が大事です。

目指すのは、山に人が入り、動物とも共に生きられる環境。

子どもたちが入れる山を、もう一度つくりたい

Q. これから、どんな山のあり方を目指していきたいですか。

A. できれば、今の小さい子たちが山に入れるようにしたいです。今の山は、整備されていない場所も多いです。針葉樹やカラマツばかりになっているところもある。

昔は、広葉樹林がありました。ナラや栗の木もありました。そういうものを残しながら、山を整えていきたいです。

Q. 農家さんの被害にもつながる話ですね。

A. そうですね。山に入ればわかるんですけど、動物たちの食べ物がないんです。だから、動物たちは畑に降りてきて、農作物を荒らしてしまう。

それを害獣として殺してしまうのはどうか。山の中に食べ物があれば、畑に降りてこなくて済むかもしれない。

Q. 人と動物の関係も、山の整備とつながっているんですね。

A. そう思っています。動物と人間が共有できる山、共生できる山。そういう山のあり方を考えていきたいです。

もちろん、すぐにできることではありません。でも、木を伐る仕事をしているからこそ、山がどうなっているかも見えてきます。子どもたちが入れる山を、もう一度つくっていきたいですね。

編集後記

小林さんの仕事は、木を伐る仕事でありながら、山をなくす仕事ではありませんでした。
簡単に倒せない木を安全に伐り、思い入れのある木は一部を形にして残す。
その先に、子どもたちが入れる山や、人と動物が共に生きられる山を考えているのだと感じました。

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特殊伐採は、できる人がまだ少ない仕事です。必要なときに一緒に現場へ入れる伐採経験者や、ロープワークに関心のある人とつながりたいです。
自分の仕事では、一人作業は絶対にさせません。危険な仕事だからこそ、声をかけ合えて、無理なときに交代できるチームが必要です。特殊伐採に関心がある人、山の仕事に関わってみたい人がいれば、一緒に現場をつくっていけたらと思っています。
また、樹木医の方ともつながりたいです。自分は伐採の仕事をしていますが、樹の病気や根の状態、寄生しているものなど、判断が難しいこともあります。病気の名前や状態を教えてもらえる方がいれば、現場での判断にもつながります。
山林整備や、広葉樹林づくりに関心のある人ともつながりたいです。ナラや栗のような木を残しながら、子どもたちが入れる山、人と動物が共に生きられる山を一緒に考えていけたらと思っています。

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