おばあちゃんの商店みたいに。土屋商店・土屋智巳が小布施につくる、ふらっと寄れる場所
2026.06.06
Relay From ひげのコーヒー 西野智史さんからご紹介いただいたのは、小布施町で「土屋商店」を営む土屋智巳さんです。
小布施町にある「土屋商店」は、もともと土屋智巳さんのおばあちゃんが営んでいた商店でした。
生活雑貨、たばこ、駄菓子。
たばこを買いに来るおじいちゃんもいれば、駄菓子を買いに来る子どもたちもいる。小さい頃の土屋さんの記憶には、いつも人が出入りするにぎやかな場所として残っています。
その場所を、土屋さんはカフェとしてリニューアルしました。一方で、土屋さんはフリーのウェディングプランナーとしても活動しています。地元である小布施町を含む北信地域、軽井沢や白馬といったリゾート地等々、お客様の希望に合わせて会場やスタッフを組み結婚式をプロデュースする仕事です。
石垣島での暮らしを経て、小布施に戻り、おばあちゃんの商店をもう一度、人が集まる場所にする。
子どもが水を飲みに来る。
おばあちゃんが携帯の使い方を聞きに来る。
農家さんが休憩に来る。
そんな土屋商店のこれからについて伺いました。
おばあちゃんの商店を、もう一度
Q. まず、現在のお仕事について教えてください。
A. 土屋商店は、去年の12月にオープンしました。また、カフェをやりながら、並行してフリーのウェディングプランナーもしています。
カフェでは、自分で育てたものや、縁のある素材を使っています。
ウェディングの仕事は、お客様の希望に合わせて結婚式をつくっていく仕事です。軽井沢や白馬などのリゾート地で行うことも多いですし、ガーデンやレストランなど、お客様がやりたい場所を一緒に探すことも。会場だけではなく、どんな人たちと一緒に当日をつくるのか、スタッフを集めるところから関わります。お客様の希望に合わせて、場所や人を組み合わせていくような仕事ですね。
Q. 土屋商店を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
A. ここは、もともとおばあちゃんがやっていた商店なんです。
小さい頃の記憶では、生活雑貨やたばこ、駄菓子を売っていました。
たばこを買いに来るおじいちゃんもいたし、駄菓子を買いに来る子どもたちもいた。すごく賑やかだったことは覚えています。
結婚式の仕事をしているのもありますし、自分自身、人とたくさん喋るのが好きで。
このあたりでは、人が集まれる場所があまり多くない。だから、おばあちゃんがやっていた商店のような、人が集まる場所をもう一度つくれたらいいなと思っていました。
自分でやりたいという気持ちと、おばあちゃんがやっていた場所が、ちょうど重なった感じですね。

取材中も明るく、よく笑って話してくれた土屋さん。人が自然と集まってくる理由が、少し分かる気がした。
石垣島での時間と、「土屋って何者なの?」
Q. 小布施に戻る前は、石垣島にいらっしゃったんですよね。
A. はい。30歳くらいの時に石垣島に移りました。
結婚式に携わる仕事は大学卒業後からずっとやってきていて、フリーのウェディングプランナーを始めたのがこのタイミングです。
ただ、それだけで食べていけたわけではなくて。飲食店で働いたり、友達のお店を手伝ったり、ケーブルテレビでアルバイトをしたり。楽しそうな仕事、興味のある仕事をいろいろやっていました。
顔はめちゃくちゃ広かったと思います。
でも、周りから見ると「土屋って何者なの?」という感じもあったかな、と。
自分としては、ウェディングをやっているという自負もありましたし、仕事自体も楽しかった。でも、何者なのかという葛藤がありました。
Q. 小布施に戻ってきてから、その感覚は変わりましたか?
A. そうですね。長野に戻ってきて、お金をかけて、自分の拠点をつくりました。
このおばあちゃんのお店をリフォームして、土屋商店を始めたことで、ようやく「自分はこういうものです」と名乗れるようになった気がします。
今は、ウェディングプランナーであり、土屋商店の店主でもある。二足の草鞋みたいな感じではありますが、自分の軸ができた感覚ですね。
お店をつくったことで、ウェディングプランナーとしての認知も少しずつ広げていければと考えています。
フリーのウェディングプランナーって、まだあまり一般的ではありません。
結婚式を考える時、多くの方はまず結婚式場に行きますよね。だから、土屋商店が自分の仕事を知ってもらう場所にもなればいいなと思ってて。例えば、お店に来たおばあちゃんが「うちの孫の結婚式どうかな」って思ってくれたり。
そういうきっかけにもなれば嬉しいです。

石垣の植物を使ったデコレーションで祝福された結婚式。土地にあるものを活かしながら、みんなで一日をつくっていく。
心地よく暮らす
Q. 石垣島での暮らしは、今のお店にも影響していますか?
A. 石垣島にいたことは、経験値だけではなくて、いまのライフスタイルを形づくる時間でもありました。
もともと、エコとかSDGsとかを言うのは好きではないんです。自然的なものを自然に暮らしに取り込みたいというか。
石垣島にいた時は、当初はごみのこともそこまで気にしていませんでした。新しいものを買って、古いものを捨てる、という感じで。
でも、島はごみの問題が大きくて。海に落ちているごみを拾ったり、海に流れる下水のことを考えたりする中で、少しずつ意識が変わりました。周りの人たちの影響もありましたね。
小布施に戻ってきてからも、生ごみはコンポストに持っていくとか、プラスチック製品を控えるとか、お店の家具も今あるものを使うとか。
自然にいいから使っています、と強くアピールしたいわけではなくて、伝わる人に伝わればいいかなと。
ただ、自分がそういうふうに心地よく暮らしたいんです。

土に還る素材のウェディングドレスを、みんなで集めたヨモギで染めた。結婚式を一緒につくる、土屋さんらしい一場面。
みんなで楽しく場をつくる
Q. 仕事をする上で、大切にしていることはありますか?
A. 自分も、関わってくれる人も、心地いいことが一番です。もともとそのように考えてきたことでもあるし、石垣島での暮らしの中でもそうでした。ローエネルギーな暮らし方というか。あまり消費しすぎない暮らし方が、自分にとって心地いいんです。
あとは、一緒に関わる人が楽しんでくれること。これは結婚式でもカフェでも、すごく大事にしています。
結婚式のプランナーとしても、「お客様の幸せのために!」と頑張るというより、スタッフ全員が同じ方向を向いて、楽しく一日を過ごせることが大事だと思っています。
そうすると、結果的にゲストの方にとってもいい時間になる。一人でワンマンでやるより、みんなで場をつくっていく。そういう感じが好きなんです。

上田のレストランで行われた結婚式。ヨモギで染めた衣装をまとい、自然の中を歩く二人。
子どもたちがふらっと来る店
Q. 土屋商店は、どんな場所にしていきたいですか?
A. 地元の人にたくさん愛してもらえるお店にしたいです。
子どもたち、おじいちゃん、おばあちゃん。いろんな人が来てくれる場所にしたい。
今、子どもたちがめちゃくちゃ集まっているんです。学校帰りに来て、水を飲んで、シール交換をしていたり。大騒ぎです。
最近は暑くなってきているので、子どもたちが水をぱっと飲めるようにもしていて。お茶してくれなくても別によくて、コミュニティスペースみたいに使ってもらえれば。
とにかく元気がいいので、扱いに困ってますけど(笑)。
でも、そういう子どもたちがいてもいいと思ってくれるお客さんが来てくれているので、今のところうまく回っています。
おばあちゃんが携帯の使い方を聞きに来ることもあったり。最近はぶどうの時期になったので、農家さんが休憩に来てくれることもあります。
大人はお金を持っているから、行ける場所を自分で選べるじゃないですか。
でも、子どもはそうではない。
だから、駄菓子屋のおばちゃんじゃないですけど、地元の子たちがふらっと立ち寄れる場所でありたいと思っています。
「あそこ行ってたよね」と言ってもらえる場所に
Q. これからの展望を教えてください。
A. 今は割と、自分がなってほしい方向に急に進んできている感じがあります。
将来的には、今来てくれている子どもたちが大人になった時に、
「あそこ行ってたよね」
と言ってもらえるお店にしたいです。自分が子どもの頃に、おばあちゃんの商店に人が集まっていたように、土屋商店もそういう場所になれたらいい。
カフェとしても、ウェディングプランナーとしても、いろいろな人と関わりながら続けていけたらと思っています。
編集後記
土屋さんの話を聞いていて印象的だったのは、暗い話に向かわないところでした。
石垣島でいろいろな仕事をしていたこと。
「土屋って何者なの?」と思われていた時期があったこと。
お金や経営戦略は得意ではないと笑って話すこと。
大変だったこともあるはずなのに、土屋さんの言葉はどこか明るい。それは多分、人と関わることを本当に楽しんでいるからなのかな感じました。
子どもたちが集まって水を飲んでいたり、おばあちゃんが携帯の使い方を聞きに来たり、農家さんが休憩に来たり。
おばあちゃんの商店の記憶は、形を変えて、少しずつ今の土屋商店に戻ってきているのかもしれません。
We Can
土屋商店では、自分で育てたものや、縁のある食材を使ったカフェを営んでいます。
また、フリーのウェディングプランナーとして、軽井沢や白馬などでの結婚式も手がけています。
お客様の希望に合わせて、会場やスタッフを組み、当日まで一緒に形にしていきます。
カフェとしても、ウェディングとしても、人が集まる時間を一緒につくることができます。
We Want
お金や経営戦略については、まだまだ課題があると感じています。
カフェとしてしっかり売上をつくること、ウェディングの仕事と両立しながらお店を続けていくこと。
そのあたりを一緒に考えてくれる人がいると、とても心強いです。
また、食材、ワークショップ、地域の企画など、土屋商店と一緒に楽しく動いてくれる方ともつながっていきたいです。
Next Relay
このバトンが、次へつながる。
有限会社糀屋本藤醸造舗 鈴木はるなさん
土屋商店では、自分たちの田んぼでつくったお米を使った甘酒を提供しています。 その甘酒には、糀屋本藤醸造舗さんの麹を使っています。味噌づくり体験のワークショップなどでも関わりがあり、次にご紹介したい方です。