飯山で、美味しい笑顔が生まれる場所を。扇谷優さんが「ワレもこウ」に込めた、飾らない想い
2026.05.16
Relay From 清野友之さんにご紹介いただいたのは、飯山市で「ワレもこウ」を営む店主、扇谷優(写真向かって右)さんです。地元食材への深い愛情と、地域への貢献にかける熱い思いを持つ扇谷さんの、これまでの歩みと未来へのビジョンに迫ります。
飯山市の中心部に店を構える「ワレもこウ」は、ランチ、ディナー、そしてテイクアウトと、多様な形で地元の食卓を彩る人気店です。2018年5月のオープン以来、今年で8年目を迎えるお店では、扇谷さん自ら栽培した野菜をはじめ、北信地域の旬の恵みをふんだんに使用。季節ごとに表情を変えるメニューは、訪れる人々に常に新たな発見と喜びを提供しています。今回は、常に挑戦を続ける扇谷さんの、人間味溢れるストーリーをお届けします。
「食」への原点と、北信地域へ戻るまで
Q. 扇谷さんが飲食業を目指されたきっかけと、現在に至るまでの経緯を教えてください。
A. 昔から飲食業への憧れは持っていたのですが、大学時代にイタリアンのお店でアルバイトを経験したことが大きな転機でした。ホールから調理補助、最終的には副店長まで務め、飲食の面白さにのめり込んでいきました。卒業後、一度は営業職に就いたのですが、自分には合わないと感じていた頃、父が脱サラして木島平村でペンション経営を始めることになり、2008年に私も一緒に移住することになりました。木島平村の「山の家パーニス」で、父がパンを、私がそれ以外の料理を担当する日々。その中で、改めて自分の将来を考え、一度木島平村を離れて東京の和食店で3年半ほど修業を積みました。そして、再びこの北信地域に戻り、飯山市に自分の店「ワレもこウ」をオープンしたんです。

店舗にて取材に応じてくたさった。
壁を乗り越え、自分らしい道を見つける
Q. これまでの人生で、特に印象に残っている「壁」や「挫折」はありますか?
A. いくつかありますが、新卒で就いた営業職での飛び込み営業は本当に辛かったですね。なぜ自分に合わない仕事を選んでしまったのだろうと、スーツを着るのもしんどい毎日でした。また、一度は英語を仕事にしようと勉強した時期もあったのですが、自分の実力の限界を数字として突きつけられ、どう努力すればいいか分からない状況に陥ったこともあります。その時、明確に努力の方向性が見えて、自分にできると確信できたのが「料理」だったんです。私には料理しかない、と和食の道に進む決意をしました。
Q. そのような壁をどのように乗り越えられたのでしょうか?
A. 営業職が辛かった時は、母が「そんな会社は辞めたほうがいい」と背中を押してくれ、父がペンションを始めるタイミングで、その手伝いをするという名目で退職することができました。父にも感謝しています。また、ニーチェの「他人のために自己犠牲を払うのはエゴである」という言葉に出会ったことも大きいです。結局それは自分のためであって、本当に人のためになっているわけではない。自分がやりたいことをやることで、結果的に周りの人のためにもなるのだと気づかされました。父のペンションを手伝うというプレッシャーを感じる時期もありましたが、この言葉を知ってからは、父のパンを使ったハンバーガーを提供するなど、二次的な広がりも生まれましたし、あの決断は間違っていなかったと確信しています。

父が経営する山の家パーニスのパンを使ったハンバーガー。お持ち帰りも可。
地域に根ざし、丁寧に紡ぐ「ワレもこウ」の味
Q. 「ワレもこウ」を経営される上で、大切にされている「こだわり」や「ルール」はありますか?
A. 一番は「自分の手に負える範囲でできることを丁寧にやる」ことです。無理をせず、今できることを精一杯行う。そして、地元食材を積極的に使うことで、地域に根差し、愛されるお店になれれば嬉しいですね。また、社員1名、アルバイト5名という体制で店を回しているので、従業員とのコミュニケーションも非常に大切にしています。お願いしたり、相談したり、時には頼ったりすることで、良い人間関係を築き、お店が円滑に回るように心がけています。

定番人気はハンバーグ定食。飯山ブランドポークみゆき豚の角煮や、新商品のオムライスもお写真に収めていただいた。
若者と共に、飯山の未来を拓く
Q. 扇谷さんが考える、この地域の未来へのビジョンをお聞かせください。
A. 若者が地域から減少していく傾向にあるので、将来的には夜のお客さんが減ってしまうのではないかと懸念しています。ゆくゆくはお店の形態も変えていく必要が出てくるかもしれません。若者がこの地域に帰ってきやすい環境を作ったり、移住者が増えたりすることで、地域を盛り上げる一助になれれば嬉しいです。留学中に言われた「一番最短で何かを成し遂げたいときの近道は失敗すること」という言葉を、特に若い世代に伝えたいですね。何かを手に入れたいなら、失敗を恐れずに挑戦することが一番の近道だと私も信じています。私自身も、今なおトライアンドエラーを繰り返しながらお店を経営していますから。

ワレもこウ、入口。われもこうありたいという意味の花の名前にちなむ。暖簾のデザインも然り。
「美味しいものを食べて、元気になってほしい」。そんなシンプルな思いを、扇谷さんはストレートに、楽しそうに話してくれました。
派手な花ではないかもしれませんが、野に咲くワレモコウのように、飯山という土地にしっかり根を張って、日々の食卓を支えている扇谷さん。彼女とお話ししていると、難しいことは抜きにして「食べるって、やっぱりいいな」と改めて感じさせてくれます。お腹いっぱい食べて、ひとしきり笑い合って、明日からまた頑張ろうと思える。そんな温かいパワーを、一皿一皿から分けてもらった気がします。
We Can
ワレもこウでは、イベント会場の提供やお弁当の仕出しが可能です。また、海外経験が豊富で外国人のお客様との交流も多いため、国際的な繋がりを求めている方々との橋渡し役も担えます。
We Want
冬季に木島平村で父が営むペンションのお手伝いをしてくださる方を求めています。
Next Relay
このバトンが、次へつながる。
有限会社松原商事 松原佳祐さん
同じく飯山で事業を営まれている方。
ゴルフインストラクター 佐藤快さん
幼いころからゴルフをされている方、近々開業されるとお聞きしています。